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2020年8月13日(木)

主張

香港市民の逮捕

国際社会が暴挙を許さぬ声を

 香港警察が10日、中国当局に批判的な「リンゴ日報」紙創刊者の黎智英氏、民主活動家の周庭氏ら10人を「国家安全維持法」違反容疑で一斉に逮捕しました。弾圧に強く抗議します。両氏はその後保釈されましたが、起訴される恐れがあります。6月30日に施行された同法によって香港警察は市民を次々に逮捕しています。香港市民をはじめ世界で批判の声が広がっています。中国と香港当局は弾圧をただちに中止し、逮捕した人たちを釈放すべきです。

政権批判を広く犯罪に

 香港警察は7月1日、抗議デモで「香港独立」の旗を所持していたとする参加者を逮捕し、21日には「香港を取り戻せ」のスローガンを掲げた区議会議員を逮捕しました。その後も政治団体代表の逮捕や活動家の指名手配など弾圧を強めています。30日には、立法会議員選挙に立候補を届け出ていた民主派候補12人の立候補資格を選挙管理委員会が剥奪しました。いずれも「国家安全維持法」違反を根拠としており、選挙に立候補する権利すら奪っています。

 黎氏の逮捕は報道の自由の蹂躙(じゅうりん)です。これまで「デモの扇動」などで何度も逮捕された周氏は、今回は理由も示されずに逮捕されたと不当性を訴えています。

 政権批判を広く重罪で禁止する同法の本質がはっきりしました。「国家安全維持法」は「国家の分裂」「政権の転覆」「政府機関の機能遂行の妨害」などを犯罪とし、「画策」したと当局が判断しただけで罪とされます。どんな行為が犯罪にあたるかは当局次第です。最高刑は無期懲役です。

 同法を制定したのは香港ではなく中国の立法機関です。施行後、香港に「国家安全維持委員会」が設置され、中国政府が顧問を派遣しています。中国政府の出先機関である「国家安全維持公署」も設けられ、中国当局が直接弾圧を行っています。香港の「一国二制度」が有名無実になりかねないと、制定前から警告されていました。その危惧が現実となっています。

 香港政府は9月6日に予定されていた立法会議員選挙を、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に1年間延期しました。しかし民主派の立候補禁止に続く延期決定は「感染防止に名を借りて市民の投票の権利を乱暴に奪おうとしている」(民主派議員の共同声明)と批判されています。

 人権侵害は単に国内問題ではなく国際問題です。中国政府は世界人権宣言、国際人権規約、ウィーン宣言を署名、支持しています。本土でも香港でも人権と自由を尊重する国際的責務を負っています。香港の地位を定めた香港基本法は、国際人権規約の自由権規約が香港に適用されると明記しています。中国はこれらの国際取り決めを平然とほごにしています。

社会主義とは無縁な専制

 中国が行っている人権侵害は「社会主義」とは無縁な専制支配そのものです。社会主義・共産主義は自由と人権、民主主義を豊かに発展させるものです。主権者としての国民の権利や民主主義を刑罰で奪う中国共産党は共産党の名に値しません。

 中国当局がどんなに野蛮な手段で香港の民主化運動を圧殺しようとしても世界は許しません。国際社会が抗議の声をさらに高める必要があります。


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