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2020年8月10日(月)

核兵器禁止条約に参加する新しい政府を――「橋渡し」論は欺瞞

長崎で志位委員長が会見

 日本共産党の志位和夫委員長は9日、長崎市民会館で記者会見し、広島・長崎の被爆75周年にあたって、「核兵器のない世界」にむけて、核兵器禁止条約に参加する新しい政府をつくる決意を表明しました。また「黒い雨」訴訟にかかわって、政府は控訴を断念し、速やかに被爆者を救済するよう重ねて求めました。志位氏の見解を紹介します。


核兵器禁止条約に対する日本政府の姿勢が厳しく問われる

 広島・長崎の被爆75周年の今年、「核兵器のない世界」にむけてどうやって進むかが大きな焦点となっています。核兵器禁止条約に43カ国が批准、発効まであと7カ国とカウントダウンになるもとで、日本政府の姿勢が厳しく問われています。

 安倍首相は、広島と長崎の平和式典でのあいさつで、核兵器禁止条約について一切ふれませんでした。繰り返したのは、「立場の異なる国々の橋渡しに努め、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリード」するということでした。

  「橋渡し」という言葉を繰り返しているわけですが、日本政府の唱える「橋渡し」論は、まったくの欺瞞(ぎまん)ということを指摘しなければなりません。

「橋渡し」でなく、核保有大国の「お先棒担ぎ」がその実態

 第一に、そもそも日本政府は、「核兵器のない世界」という言葉を口先では言いますが、それを実現する立場にたっていません。

 日本政府が「橋渡し」論の実践として、国連総会に提出している核兵器問題の決議(「核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話」)では、核兵器廃絶を「究極目標」と位置づけ、永遠の将来に先送りにする立場をあからさまにのべています。

 さらに、日本政府は、核兵器禁止条約への参加は「核抑止力の正当性を損なう」と繰り返し、核保有国がよりどころとする「核抑止力」論にしがみついています。

 日本政府の立場は、核兵器廃絶でなく核兵器固執にほかなりません。こういう政府が、「唯一の戦争被爆国」の政府を看板にして、「橋渡し」を説くのは欺瞞そのものといわなければなりません。核兵器保有大国の「お先棒担ぎ」がその実態にほかなりません。

核兵器廃絶か、核兵器固執かの対決――「橋渡し」論は国際的にすでに破たん

 第二に、そもそも核兵器をめぐる国際政治の構図は、核兵器廃絶か、核兵器固執かの対決となっています。この両者は立場を百八十度異にしており、その間に、「橋渡し」をすることなどできません。

 それを証明しているのが、日本政府が「橋渡し」論の実践として、国連総会に提出した決議がどうなっているかです。この決議は、「核兵器のない世界」をうたいながら、核兵器禁止条約に一切言及していません。核兵器廃絶を「究極目標」として、永遠の将来に先送りし、核戦力の維持・強化をはかる核兵器保有大国の意向にそったものとなっています。

 日本政府提案の決議は、核兵器禁止条約の先頭にたってきた国々から厳しい批判をあびました。他方、米国は棄権、中ロは反対しました。「橋渡し」といいますが、「橋」の両端が落ちてしまったのです。「橋渡し」論は、国際的にはすでに破たんしたものにほかなりません。

いま大切なことは、諸政府と市民社会の共同で、核固執勢力を包囲すること

 今求められているのは、世界の多数の国々の政府と、草の根の市民社会が力をあわせて、核兵器固執勢力を包囲し、その政策を変更させることにあります。

 核兵器をめぐる情勢は、表面だけを見れば核保有大国による新たな核軍拡競争など厳しい状況もありますが、大局で捉えるならば、核兵器禁止条約の成立など、核兵器廃絶の勢力が、核兵器固執勢力を追い詰めるプロセスが力強く前進しつつあります。

 核兵器禁止条約を発効させるとともに、来年1月に予定されるNPT(核不拡散条約)再検討会議でも「核兵器のない世界」に向けた前進をつくっていくために、世界の多くの諸政府と市民社会の連帯を大いに強めていきたいと決意しています。

 唯一の戦争被爆国・日本の政府は「核兵器のない世界」をめざす取り組みの先頭にたつべきです。

 その意思も能力もない安倍首相に被爆国の政府をあずかる資格はありません。

 市民と野党の共闘の力で、安倍政権を終わらせ、核兵器禁止条約に参加する新しい政府をつくるために全力をあげてたたかうことを、被爆75周年にあたって表明するものです。


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