しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年7月26日(日)

主張

「やまゆり園」4年

「命の選別」を許さない社会を

 神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害され、職員を含む26人が重軽傷を負った事件からきょうで4年です。殺人罪などに問われた元職員が「障害者には生きる価値がない」という到底容認できない主張を続け犯行を正当化したことは国内外に大きな衝撃を与えました。横浜地裁は3月、元職員に死刑を言い渡し、同判決は確定しました。しかし、裁判でも、元職員が障害者に憎悪を抱き、残忍な犯行に至った背景などの解明は尽くされていません。「命を選別する」風潮が根深く社会に存在する中で、事件を問い続けることが必要です。

問われ続ける犯行の背景

 「やまゆり園」事件が、障害者・家族をはじめ多くの人にショックを与えたのは、犯行の残虐さとともに、「障害者は不幸をつくることしかできない」などの異常な言動でした。これは、人間に優劣をつけ「劣った命」は奪ってもいいとする「優生思想」そのものです。元職員がなぜ、ゆがんだ価値観に凝り固まり、殺人を実行したのか。裁判では、思考形成の過程はほとんど明らかになりませんでした。

 障害者団体は、施設設置者の神奈川県に対し、元職員が「やまゆり園」で障害者と接する仕事をしながら、障害のある人とのかかわりに積極的な意味や価値を見いだすのでなく、逆に障害者を否定する考えを募らせた背景をより突っ込んで解明するよう求めています。

 障害者や家族、関係者が、強く危機感を抱いているのは、この事件が障害者をはじめ社会的な弱者や少数者に対する差別や偏見、排除を当然視する「空気」の強まりの中で起きたことです。裁判の中で、元職員は、米国の大統領選に出馬したトランプ氏について「勇気を持って真実を話している」ことなどに共感があったと述べました。社会に分断を持ち込み、「生産性」や「効率性」を求める価値観が、元職員に影響を及ぼしたことは、否定できません。

 日本でも政権党を中心に、貧困と格差を「個人の自己責任」と突き放したり、障害者や高齢者を「社会のお荷物」と扱ったりする発言が後を絶たないことは見逃せません。一人一人の人間を大切にしない考えの助長・拡大を許さない取り組みが強く求められます。

 「やまゆり園」事件から4年の節目を前にした23日、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者からの依頼を受けて、薬物を投与して殺害した容疑で2人の医師が逮捕され、衝撃を広げています。

 ALS患者が、なぜ生き続けることの希望を失ってしまったのか。医療制度をはじめ社会の仕組みが患者を追い詰めていないのか。医師がなぜそのような行為に及んだのか―。難病患者の人権と尊厳、生きる権利にかかわる多くの深刻な問題が突き付けられています。「やまゆり園」事件にも通じる重大な課題も少なくありません。徹底的な解明が欠かせません。

人権と尊厳の保障こそ

 新型コロナウイルスの感染拡大の中、多くの障害者は必要な支援を受けられなくなるのではと危惧を抱きました。海外では人工呼吸器が不足した時、障害者につけない動きもあると報じられました。障害を理由にした「命の選別」は許されません。障害のある人もない人も、命、人権、尊厳が保障される社会づくりが急務です。


pageup