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2020年7月12日(日)

政治考

都知事選 「同じ思い」で本気の共闘

新自由主義と決別も

 新型コロナ感染拡大から都民の命とくらしをどう守るかをめぐりたたかわれた東京都知事選―。善戦・大健闘した宇都宮健児候補を支えた市民と野党の共闘は、画期的な前進、発展を示しました。


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(写真)声援に応える(右から)社民・福島瑞穂、共産・小池晃、宇都宮、立民・長妻昭の各氏=6月21日、東京・中野駅北口

 「有権者に“本気で政治や社会の在り方を変える共闘”だと示せれば、安倍政権に代わる受け皿になれる。今回の都知事選では“本気の共闘”でたたかう形に近づいた」

 こう話すのは、渋谷区・中野区(衆院東京7区)に市民と日本共産党、立憲民主党、新社会党などが参加した共同「選対」=「しぶなか市民選挙連絡会」(6月14日結成)の統括窓口を担った韮澤進さんです。同区では2017年の総選挙、18年の中野区長選などで野党共闘を実現し、勝利してきました。

常に共同で動く

 目黒・世田谷両区(衆院東京5、6区)の共同選対では、宇都宮氏支援で野党が結集してたたかったことに「『最高に幸せだ』との声も出た」(共同選対の政党メンバー)といいます。リレートークや「のびのびウォーキング」、毎日の駅前スタンディングなど野党と市民で多様な宣伝を展開。SNSを見た市民が宣伝に参加するなど、支援の輪を広げました。同選対事務局の森正樹さんは「各野党の議員さんを含めて結束力が強まり、“本気の共闘”になった実感がある」と語ります。

 「しぶなか」の韮澤さんは、「これまでの共闘では各政党が独自に動く部分が多かったが、今回は常に『共同』で動き、質的に全く違った」と語ります。街頭宣伝や電話かけ、法定ビラ配布やポスター張り出しの地域区分、宣伝カーの手配など、選挙運動の実務でも市民と各政党は緊密に連携。街宣で共産党と立民の区議同士が「グータッチ」を交わすなど、「『選対』での連携が選挙運動のさまざまな場面で発揮された」といいます。

弱い人の立場に

 市民と野党が結束を強めた大本に、都のコロナ対策をただし、「自己責任から連帯社会の実現へ」との新自由主義批判という、宇都宮氏の確固たる姿勢と政策がありました。

 韮澤さんは「候補者一本化は『勝てるかどうか』より、政治姿勢が大事。弱い人の立場に立つかどうか。宇都宮さんはその価値基準がはっきりしていた。そうした旗印があってこそ、共闘の大義もはっきりするし、お互い『同じ思いだ』と確信を持てる。数合わせでないたたかいができる」と強調。「立憲民主党が新自由主義に対してだめだと言い始めたことはうれしい。その思想はいろんなところにつながっている。たとえば都政、国政、区政で予算をどう使うのか、最大の価値基準だ。非常に大きい」といいます。

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(写真)五十嵐仁法政大学名誉教授

 政治学者の五十嵐仁法政大名誉教授は、「総選挙へのプラスの変化の一つは、コロナ禍の下で、新自由主義からの決別が広がったことです。野党の中で政策的な発展がありました」と指摘します。

鮮明な旗印 心通わせ

“こんなに人が!”

 今回の都知事選で初めて共同「選対」が結成された青梅市、福生市など衆院東京25区の「都政を変えよう! 西多摩・昭島市民の会」の責任者の山下千尋氏は、「共同宣伝も共同会議もすべて手探りだったが、スムーズにできた。市民連合が政党と懇談を積み重ねてきた結果でもある」と話します。

 同区では17年の総選挙で市民連合が結成されたものの、「政党同士のつながりは薄かった」と山下氏。立憲民主党が都知事選で宇都宮氏支持を表明する中、市民連合が日本共産党、立憲民主党、社民党に「選対」立ち上げを呼びかけ、急速に議論が進みました。25区の全9市町村から市民が参加し、全市町村に責任者を置きビラ配布などを分担しました。

 「共闘の本気度がはっきり見えた」(山下さん)というように、7月2日の羽村駅前(羽村市)での宇都宮氏の街頭演説には、350人が参集。「羽村でこれだけ人が集まったのを見たことがない」と振り返ります。

10代20代 高く支持

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(写真)訴える宇都宮けんじ都知事候補(中央)=6月18日、東京・JR新橋駅前

 「有権者の、特に若者のチラシの受け取りが良かった」(目黒・世田谷両区の選対メンバー)というように、NHKの投票日の出口調査では無党派層の約20%が宇都宮氏を支持し、とくに10代・20代は高く支持しました。中野区では、投票日翌々日の7日、中野駅前でのスタンディング中に20代の女性が駆け寄り、「宇都宮さんに入れました。私の周りもみんな宇都宮さん支持でした」と述べました。

 五十嵐氏は、「若年層は、女性と並んで新自由主義的政策とコロナ禍によって、二重三重の被害を受けている。若者の生活苦、貧困問題に正面から真剣に向き合う宇都宮氏の政策が共感を呼んだのです」と語ります。

 高く鮮明な旗印のもとに心の通った共闘が実現したことは、選挙結果そのものを超えて大きな財産を残しました。

 宇都宮氏も5日夜の会見で次のように述べました。

 「経済効率性ばかり重視して命や暮らしを後回しにする政治の転換を求める勢力が私を応援していただいた。こういう団体の活動が次の新しい社会をつくる原動力になっていくと期待しています」

野党が信頼し結束

 マスメディアは今回の都知事選で、「野党は分裂した」などと決めつける論評を繰り返していますが、事実にも反する皮相な見方です。

 今回の都知事選では、政党では立憲民主党、日本共産党、社民党、新社会党、緑の党が宇都宮氏を支援。国民民主党は自主投票でしたが、平野博文幹事長をはじめ原口一博国対委員長、小沢一郎衆院議員が応援に駆けつけ、事実上の野党統一候補となりました。選挙戦を通じて野党の信頼と結束が強まりました。

 告示日を含め野党党首が3回にわたって街頭に並び立ち、宇都宮氏の支援を訴えたことは大きな特徴です。

 告示日の6月18日は新橋駅前で、共産党の志位和夫委員長、社民党の福島瑞穂党首と並んだ立民の枝野幸男代表は「私個人としても立憲民主党としても、国政公認候補並みに全力で応援する」と表明しました。

 同28日には銀座で、志位、枝野、福島各氏に加え、社会保障を立て直す国民会議代表の野田佳彦前首相が駆けつけ、「“右バッター”として最後まで宇都宮さんを応援する」と表明。最終盤3日の新宿駅東南口には、志位、枝野、福島各氏とともに岡田克也前副総理が立ちました。

 市民の中でも支援の輪が広がり、幅広い文化人・知識人が応援。東京に25ある衆院小選挙区のすべてで、市民と野党による宇都宮市民選対が立ち上がりました。

 支援の広がりとあわせて、政治の基本的あり方に関する政策の方向性が共有されました。新型コロナで、「新自由主義」の大破綻が明らかになり、その転換が語られました。枝野氏は、「人は一人では生きられない」として新自由主義からの決別を主張。志位氏は「自己責任の押しつけでなく、連帯の力でよりよい未来をつくろう」と語り、訴えが響きあいました。

 (伊藤幸、中野侃、日隈広志、行沢寛史、若林明が担当しました)


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