2020年7月6日(月)
熊本豪雨 音もなく“じわっと”
浸水の恐怖 募る不安
記録的大雨から一夜明けた5日、球磨川が氾濫した熊本県の被災地では、取り残された人たちの救出作業が続きました。時間を追うごとに増える死者、広がる被害、泥水につかった家屋を前に、ぼうぜんと立ちつくす人…。被災者からは支援を求める声があがりました。
球磨村
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介護施設の入所者14人が心肺停止で見つかった球磨村。依然、村は水につかったままです。村に入る国道では警察の規制線が張られ、村内には水がたまり、道路が見えない状態。自衛隊が船で行き来しています。
「水は音もなく球磨川から“じわっと”上がってきた。ものすごく怖かった」―。球磨川の南300メートルに住む男性(70)は4日朝の恐怖を話します。「1時間半で4メートルが増水した。急だったので周りの状況がまったく見えなかった」
家族は妻と娘夫婦と最年少が2歳の孫3人の7人。最初に持ち出せたのは「孫たちの着替えぐらい」。家の上にある寺の駐車場に車をとめ孫たちと避難。また家に戻ると水は胸の下まであり、何も持ち出せませんでした。車上で宿泊しました。
2階まで浸水した水は一時、2階の屋根がつかるまでに迫りました。今、1階の3分の2がつかっています。2階の天井板に穴があき、はがれています。
男性はこの地にずっと住んできました。「水害は何回もあった。1階の浸水は4回。でも2階まで、まるまるつかったのは初めて」と嘆きます。
今日、初めて自衛隊から2リットルのペットボトル水1本もらいました。昨夜は地域の交流センターで炊き出しがありおにぎりをもらい、朝はパンを食べました。
男性は「家のなかがごちゃごちゃ。いつ戻せるのか。まだ気が張っているが、これからどうなるか…不安」と話します。(遠藤寿人)
各地で停電・断水など
人吉市
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熊本県内各所では、水浸しになった家財の片づけに追われたり、停電や断水、電波障害などライフラインにも大きな影響が出てます。
人吉市に住む男性(79)は、今回のような大規模な水害は、50年以上住んでいて初めてだったと語りました。「家の1階は、私の身長より高い位置まで浸水しました。家の中の、何もかもが水浸しで、特に衣類がぐちゃぐちゃ。電気は感電する可能性もあるため、すぐに電源を切りました。うちでは水道は使うことができました」と状況を説明しました。
男性は、何よりも後片付けが大変だと語りました。「とにかく大型家具や電化製品、畳などの大きなものを捨てなくてはならない。後片付けや処理を強く支援してほしい」と言いました。
九州電力のホームページによると、5日午後2時の時点で同県内では約5370戸が停電しました。特に氾濫した球磨川が流れる球磨村での被害は深刻で、総戸数2520戸のうち約2370戸(約94%)が停電しています。人吉市では、電話が通じないことや、携帯電話も機種によっては使えない場所が出ました。(井上拓大)