2020年7月5日(日)
学生給付金 想定の8割
1次推薦 要件満たすも漏れる例
新型コロナウイルスの影響で困窮する学生に10万円(住民税非課税世帯20万円)を支給する学生支援緊急給付金の第1次推薦が、政府が想定した約30万人の8割、約24万人にとどまったことが分かりました。推薦枠が余る学校がある一方、申請者が推薦枠を上回ったため、少なくない学生が要件を満たしているのに推薦されなかった学校もあり、矛盾が生じています。
給付金は、新型コロナの影響で世帯収入やアルバイト収入が激減した学生を支援するもの。給付枠は1次、2次あわせて約43万人分。1次は、日本学生支援機構の無利子奨学金の貸与実績や学生数に応じて各学校に推薦枠が割り当てられ、その枠の範囲で各学校が申請してきた学生の中から支援機構に推薦する学生を選びました。
4年生の女子は、家計に余裕がないため自宅から片道2時間半かけて通学し、バイト代や奨学金も学費の支払いに充ててきました。新型コロナの影響でバイト代は4月に半減、5月はゼロ。給付要件は全て満たしますが、結果は「保留」でした。卒業研究に集中するため大学近くに部屋を借りる計画も大きく狂ったと話します。
「内心、給付を受けられると思っていたので不安です。私以外にも保留になった学生が一定数います。自分自身のこともあるけど、申請した人はみんな、困っているから申請している。全ての申請者に給付されるようにしてほしい」
保留とされた学生について、文部科学省は2次で給付する考えです。
学校に丸投げ 推薦に差
全学生の一律救済こそ
学生支援緊急給付金は5月19日の閣議決定時から、対象となる学生総数370万人に対し範囲が狭く、給付額も少なすぎると批判が出ていました。
給付を受けるには「家庭から自立してバイト収入で学費を賄っている」「新型コロナでアルバイト収入が50%以上減」など厳しい要件があり、申請自体をあきらめた学生の存在を指摘する声もあります。この問題を6月12日の参院予算委員会で取り上げた日本共産党の武田良介議員に、萩生田光一文科相は、要件を機械的に当てはめるわけではないと答えました。
短い申請期間
ただ、学生への周知や要件の扱い方は各学校に丸投げされており、学校間で申請数や推薦数に差が生じる原因になっている可能性があります。
「一律学費半額を求めるアクション」の代表は、給付金の告知から締め切りまで2週間程度しかなかった大学が多いと指摘。「申請期間が短く、制度自体を知らない学生も多い。24万人にとどまったことをもって、困っている学生が少ないかのように誘導する議論が出てこないか心配です」と語ります。
給付金について文部科学省が各学校に通知したのは閣議決定の日の夜。各学校はオンライン授業など、さまざまな新型コロナウイルス感染症の対応に追われるなか、1カ月後の締め切りへ、短期間で学生への周知から推薦者の選定まで行わなければなりませんでした。
文科省も、学生が提出書類をそろえる時間が短かったことや、周知不足を1次推薦が想定に届かなった理由にあげます。
給付金の予算額は531億円。批判を浴びた消費喚起策「Go To キャンペーン事業」の事務委託費の上限3095億円の約6分の1にすぎません。全学生を一律に救済する制度としなかったことで、大学事務に過重な負担を押し付け、要件を満たしても推薦から漏れる学生が出てくる矛盾した制度となったのです。
分断持ち込む
代表は、申請要件が厳しいうえ、申請に必要な在学証明書や住民票といった書類の取得にも手数料がかかるため、申請自体をあきらめた学生も多いと強調。申請したのに推薦から漏れた学生のなかには、自宅外から大学に通い、学費もアルバイトで賄っている学生もいると語ります。
「給付された学生と漏れた学生との間に分断を持ち込む制度になっていて、給付された学生も素直に喜べない。政府は全学生に一律で給付すべきです」(佐久間亮)