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2020年6月22日(月)

主張

マイナンバー連結

普及ありきの先走りは危うい

 安倍晋三政権が、マイナンバーと全ての住民の預貯金口座をひもづけするために、1人につき1口座を国に登録することを義務化する方針の検討を開始しました。マイナンバーカードの取得がほとんど進んでいないことが示すように、国民の圧倒的多数はそのような仕組みを必要と感じていません。むしろ政府が個人の情報を掌握・管理することについて、強い不安を抱いています。マイナンバーと個人の金融情報との連結を国民に強いることは、新たな矛盾を引き起こしかねません。

コロナの混乱に便乗し

 マイナンバーと個人の口座を連結することは、高市早苗総務相が9日の記者会見で明らかにしました。高市氏は「全ての国民に、行政からさまざまな給付を受けるために利用する一生ものの口座情報を1口座のみ、マイナンバーを付番して登録していただく制度」にすると述べ、「できれば義務化させていただきたい」と強調しました。詳細な仕組みは今後検討し、来年の通常国会に関連法案を提出するとしています。

 政府が口実に持ち出しているのは、新型コロナウイルス感染拡大対策の一つである「1人10万円給付金」の大幅な支給遅れです。政府は個人の口座が事前にマイナンバーと結びついていれば支給は迅速にできたというのです。あまりに乱暴な議論のすりかえです。

 支給で混乱を拡大した大きな要因の一つは、安倍政権がオンライン申請を宣伝し、全国民の2割弱しか持っていないマイナンバーカードの利用を推奨したためです。その結果、カードを取得したい人、普段使わないカードの暗証番号を忘れた人などが自治体窓口に殺到して「3密」状態になり、自治体職員はその対応に疲弊しました。オンライン申請を途中で取りやめた自治体も少なくありません。マイナンバーを使わない簡素な手法で住民に早く支給できるよう工夫した自治体もあったといいます。いま必要なのは、マイナンバー利用にこだわり、給付の混乱と遅れを招いた失敗を反省し、検証するとともに、マイナンバーに頼らないで国民への給付を早く実施できる仕組みをつくることです。

 マイナンバー制度は2016年に運用が本格化しました。日本国内で住民登録した全員に12桁の番号を割り振り、税や社会保障の分野で個人情報の確認などで利用するという仕組みです。しかし、多くの国民はほとんど使う機会はなく、システムのトラブルも相次ぐなど制度のあり方そのものに対する疑念の声は絶えません。安倍政権は、マイナンバーと口座の連結義務付けを制度創設当初から狙っていましたが、情報管理や所得監視などへの国民の根強い不安からなかなかできなかったものです。コロナのどさくさに紛れ、長年できなかった口座への連結の義務化をやろうというのは大問題です。

拙速なやり方は禍根残す

 安倍政権は、口座とマイナンバーのひもづけは「給付金の支給の迅速化のため」と言いますが、給付がそんなに頻繁に繰り返されるのでしょうか。むしろ登録された口座を通じて、行政が税金や保険料の強制徴収をしやすくなるのではないかと不安が消えません。国民が求めていないマイナンバー制度を無理に推進するのでなく、立ち止まって見直す時です。


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