2020年6月13日(土)
主張
辺野古工事再開
民意に背く言語道断の暴挙だ
沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古の新基地建設で、防衛省沖縄防衛局が2カ月近く中断していた工事の再開を強行しました。7日に投開票された県議選では、新基地建設阻止を掲げる玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢力が過半数を維持し、「新基地ノー」の民意が改めて示されたばかりです。そのわずか5日後の工事再開は、県民の意思を乱暴に踏みにじる民主主義否定の言語道断の暴挙です。
牽強付会の菅長官の発言
辺野古の新基地建設をめぐっては、工事現場の作業員が新型コロナに感染したことを理由に4月17日から工事が中止されていました。しかし、それは表向きの理由にすぎず、実際は新基地反対の県民世論を恐れた県議選対策で、選挙が終われば結果のいかんにかかわらず工事を再開するのは既定方針だったと報じられています。
菅義偉官房長官は8日の記者会見で、県議選で過半数に達しなかったにもかかわらず、自民党の議席増を口実に「かなり(辺野古移設の)理解が進んでいるのではないか」とうそぶき、工事再開に向けて受注業者や米軍との調整を進める考えを示していました。
しかし、今回の県議選で自民党県連は辺野古新基地「容認」を公約に明記したものの、選挙戦中はダンマリを決め込み、徹底して争点化を避けようとしました。菅長官の発言は、道理に合わないのに無理やりこじつけようとする牽強(けんきょう)付会の解釈に他なりません。
デニー知事は12日の記者会見で県議選の結果について「改めて(新基地)反対の民意が明確になった」と強調し、工事再開を批判しました。さらに、翁長雄志前知事やデニー知事が当選した知事選、衆参の国政選挙、県民投票を通し、「揺るぎない形で民意は繰り返し示されてきている」と指摘しました。こうした民意に応えることこそ民主主義国家のとるべき姿勢です。
安倍晋三政権の新基地建設ありきの姿勢は、沖縄県がジュゴンへの影響を再評価するよう求めていたにもかかわらず、沖縄防衛局が必要はないとして埋め立て工事を再開したことにも表れています。
新基地建設の埋め立て予定海域が広がる大浦湾を主な生息域にしていたジュゴンは2018年9月を最後に生存の確認がとれない状況が続いてきました。ところが、今年2月と3月にジュゴンの鳴音(めいおん)が繰り返し検知されたため、沖縄県は工事を停止してジュゴンへの影響の再評価をするよう求めていました。沖縄防衛局が再評価を拒否したことについてデニー知事が「専門家の意見を聞くこともなく、事業の再開ありきで決定された」と批判したのは当然です。
勝つ方法は諦めないこと
沖縄防衛局は4月、大浦湾の埋め立て予定海域に存在する軟弱地盤の改良工事のために設計変更を沖縄県に申請しました。しかし、デニー知事が承認することはあり得ません。しかも、沖縄防衛局は、新基地を完成させ、米軍に提供するまで今後12年かかるとしています。普天間基地の「一日も早い危険性除去」という口実の破綻は既に明らかです。
「新基地阻止のたたかいに勝つ方法は諦めないこと」―。この言葉を胸に、沖縄と全国が連帯してたたかいをいっそう広げる必要があります。