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2020年5月29日(金)

コロナ禍 ギャンブル依存症者は

自助グループ相談継続

会場使えずオンラインで

 依存症の回復に、自助グループとのつながりは欠かせません。コロナ禍で例会や集いが規制されるなか、自助グループ、依存症者はどう対処しているのか。ギャンブル依存症を取材しました。(徳永慎二)


 「ズーム(オンラインテレビ会議)を使ったのは初めて」と話すのは、佐伯徹さん(52)。依存症の回復をめざすNPO法人ASK(アスク)の依存症予防教育アドバイザーとして、依存症の啓発活動をすすめています。

「苦しい」の声に

 佐伯さんが属するギャンブルの自助グループでは、2月までは全国約200カ所の会場でミーティングを開いていました。コロナ禍で3月に入って徐々に会場が使えなくなっていきました。

 アスクでは、オンラインで仲間とつながる活動を4月下旬に始めました。ギャンブル、アルコール、薬物の各連絡先のメールアドレスをホームページで紹介しています。

 「よろしくお願いします」「よくいらっしゃいました。いい天気ですね」。ネット相談室のチャット(おしゃべり)では、こんな文字による会話から始まります。ギャンブル依存症の当事者10人~20人がそれぞれ「会話」を続けます。

 「ギャンブルが止まらなくて苦しいんです。助けてください」。こんな訴えに「私も苦しいときがあったけど、こうやって乗り越えたよ」と押し付けにならないように体験を話します。コロナ禍の今は「ズーム」も活用しています。

リアルへ橋渡し

 佐伯さんは「自分を含めて、相談者はだめな人間と思い込んでいます。そうではないよ、一人ひとり個性があっていいんだよと言葉をかける」といいます。「自分を見つめ直し、一日一日を大事にして、少しずつ自分を取り戻せるように、それぞれに応じて対応します」

 佐伯さん自身、スロットの依存症当事者。15歳から始めて、4年前に自助グループにつながり回復し続けています。「このオンラインミーティングはゴールではなく、コロナ禍収束後に、一番効果があるリアルのミーティングに向けた橋渡しです」

いま我慢の日々 夫の回復を信じて妻は

揺れ動く気持ち

 「やめなあかんと思ってはいるが、踏ん切りがつかない」と、揺れ動く気持ちを話す飲食店経営のギャンブル依存症の男性(63)=京都市=。「足が私を店に連れて行くんです」

 男性は10代から酒とギャンブルにどっぷりつかってきました。一昨年6月にアルコール専門病院に入院し、京都府断酒平安会に入会。同年9月以来、酒はやめました。

 ギャンブルは競輪、競馬、競艇、今はスロット。「何千万円もつぎこんできた。とにかくおもしろいんです」

 5月中旬すぎ、妻と散歩中、パチンコ店が開いているのを見つけました。「心が少し動きましたが、妻と一緒だったので我慢した」

 一度、精神科医の勉強会に参加したことがあります。ギャンブルも自助グループに入れば回復するとわかっています。けれど「あきらめがつかない」。いまは我慢の日々。「コロナ収束後も、ひたすら食事の準備に精出します。家族への償いです」

親身な会が支え

 男性の妻(58)は「夫はお酒のせいで体を壊し、生死の境をくぐりぬけてきた。生きていてくれたらと思い、ギャンブルはきつくいわないできました」といいます。

 コロナ禍の前は、夫婦で断酒会に通い、ギャンブル依存症の会は妻だけ。いまは名前も顔もださないで、オンラインミーティングに参加しています。「それまでずっとわからなかった夫の行動や気持ちが、わかるようになりました」。そしてこういいます。「断酒会も、ギャンブルの会もあたたかい。痛みを共有して親身になって寄り添ってもらえました。夫はきっと回復できると信じています」


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