2020年5月29日(金)
中小製造業者 危機
「受注ゼロ」「先が見えない」
ものづくり支える支援直ちに
新型コロナウイルスによる経済危機のなか、中小・零細の製造業者から「売り上げが激減し、先が見えない」「日本のものづくりが揺らいでいる」という声が聞こえてきます。町工場の街として知られる東京都大田区で聞いた、業者の実態や思いは―。(青柳克郎)
「ゴールデンウイーク明けから仕事が全くなく、5月の受注はゼロです。2008年のリーマン・ショックの時でさえ受注ゼロの月はありませんでした。それ以上の打撃です」
町工場が軒を連ねる東蒲田で金属加工業を営む男性(59)が話します。
主な製品は大手メーカーのファクスやコピー機の部品。月150万円以上の売り上げがありましたが、4月から受注が減り始め、ついにゼロに。都のコロナ対応緊急融資で500万円を借りて当面はしのいでいますが、今後、以前並みの仕事量が戻るのかどうか分かりません。
バブル後の30年間、消費税や、中国の製造業者への発注流出などの影響で仕事量は半減し、加工賃も3~4割カットされてきました。「これ以上、売り上げが減ったら経営がもちません。コロナ危機のもと、ものづくりを根底で支える下請け業者が生き残れる施策を国は考えてほしい」
部品作れる自信
5年前、父親が築いた金属加工の町工場を継いだ44歳の男性は「5月の売り上げは昨年の半分」と肩を落とします。
父親のもとで旋盤操作の腕を磨いて20年。「うちの旋盤はコンピューター制御ではない40年も前のものですが、図面さえあれば何の部品でも作れます」と胸を張ります。多様な注文に1個から応じ、1個に数日かけることもあるといいます。
「この落ち込みが、いつまで続くのか先が見えません。売り上げが減っても、工場の家賃などは変わらずにかかります。税金の減免や固定費への補助など、いまを乗り切るための支援がほしい」
蒲田民商が奮闘
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蒲田民主商工会副会長・工業部会部長で、産業機械向けの金属部品を製造する佐々木忠義さん(73)は「あらゆる分野の生産活動が落ち込むなか、これから中小の製造業者の落ち込みが本格化する」と言います。佐々木さんの工場の売り上げはリーマン・ショックの際に一時、7割減まで落ち込み、今回はそれ以上もあり得ると覚悟しています。
この30年間で業者数が3分の1に減り、いまも2日に1軒が廃業している大田区の製造業。佐々木さんが訴えます。
「産業空洞化など厳しい環境のなかで生き抜いてきた町工場のなかから、コロナを機に『もう閉めよう』という声が出始めています。下請けに過重負担を強いてきた日本の製造業のあり方が問われる事態で、下請けの経営が成り立つ構造への転換が求められています。いまの危機を乗り越えるための支援を行き届かせることも急務です」
蒲田民商には4月以降、中小業者から500件近い相談が寄せられています。国の持続化給付金や都の休業協力金、公的金融機関の融資など、あらゆる制度を活用して営業を守ろうと呼びかけ、相談会を繰り返し開いています。
石倉真喜夫事務局長が力を込めます。「つぶれてしまってからでは遅い。国や自治体は、一刻も早い支援をしてほしい。一人の業者もつぶさない決意で、いっそう取り組みを強めたい」