2020年5月29日(金)
スーパーシティ法案
大門議員の反対討論(要旨)
参院本会議
日本共産党の大門実紀史議員が27日の参院本会議で行ったスーパーシティ法案(国家戦略特区法改定案)の反対討論(要旨)は以下の通りです。
反対の最大の理由は、日本を中国のような「監視社会」に導き、個人のプライバシーと権利を侵害する重大な危険性があるからです。
スーパーシティ構想は、企業などの実施主体が住民の個人情報を一元的に管理する代わりに、医療、交通、金融などの各種サービスをまるごと提供しようとするものです。個人情報と、顔認証やスマートフォンの位置情報により掌握された行動軌跡は、ビッグデータに集積され、AI(人工知能)により分析、プロファイリング(個人の特徴を識別)されます。個人の特性や人格まで推定することが可能となります。
情報セキュリティーの世界的権威、米ハーバード大学のブルース・シュナイアー博士は「『隠し事がないのなら監視を恐れる必要はない』というのは、プライバシーの価値を矮小(わいしょう)化した危険な考え方だ」と指摘。カナダの社会学者、デイビッド・ライアン氏は、スマートシティ構想(日本ではスーパーシティ)が、監視社会を軌道に乗せるための実験場となり、結局は住民より国家・企業優先の都市になる危険性があると警告しました。
監視社会のトップランナーは中国です。政府・大企業が膨大なデータを分析し、国民への監視や統治に活用して、ウイグル族弾圧や民主化を求める活動家の拘束にも監視カメラや顔認証技術が用いられてきました。政府がスーパーシティ構想のお手本としてきた杭州市は、街全体のIT化が世界で一番進んでいますが、裏を返せば、街中に監視カメラが数千台もあるなど監視社会の最先端です。
一方、スペインのバルセロナでは、個人情報を守りながら、住民の合意に基づき、交通整理や駐車場管理、ごみ集めシステムなど住民に喜ばれるスマートシティづくりを進めています。このような街づくりこそ見習うべきですが、本法案には住民合意を担保するしくみが欠落しています。
いま重要なことは、個人情報を保護しつつ、先端技術を住民福祉の向上にどう生かすのかという落ち着いた国民的議論と、プライバシー保護という時代の流れを視野に入れた中長期的な企業戦略です。哲学もビジョンも深い考えもなく、目先の利益だけを追う一部の企業家などの拙速な要求だけで、社会のあり方を変えようとする本法案は言語道断であり、撤回すべきです。