2020年5月27日(水)
コロナ禍のもと 安心して過ごせる学校へ
全教委員長 小畑雅子さんに聞く
少人数学級 今こそ実現を
コロナウイルス感染症拡大のもと、休校が長く続いた学校が全国的に再開されようとしています。子どもたちの健康を守り、豊かな学びを保障しようと取り組む全日本教職員組合(全教)の小畑雅子委員長に、教育現場の現状と課題について聞きました。(笹島みどり)
|
長く続いた休校は子どもたちの成長・発達に深刻な影響を及ぼしています。子どもたちの命と健康を守り、豊かな成長と学ぶ権利をどう保障するのかが問われています。
不安や悩みを抱えた子どもたち一人ひとりの声に耳を傾け、教職員はもとより社会全体で子どもに寄り添い、応答する取り組みが求められます。
そのためにも保護者や地域住民が安心して仕事や営業が再開でき、収入減で進学や進級を諦めたりしなくていいように、十分な補償や学費支援などを行うことが必要です。
教育課程柔軟に
|
長い休校で学校のセーフティーネットの役割が機能せず、子どもたちはストレスや不安を抱えています。家庭内の虐待や貧困問題が深刻化している点も指摘されています。学校再開にあたっては、子どもの今の姿を丸ごと受け止め、学校を安心して過ごせる場所にすることが、最優先の課題となります。
今ほど少人数学級の実現と、子どもの実態に基づいた教育課程(授業カリキュラム)づくりが求められている時はないのではないでしょうか。
全教は20日に発表した「子どもの豊かな成長・発達を保障するための提言」で、感染抑止の「物理的距離」を確保し、学習指導を進めていくために、20人以下の少人数授業の実施を求めました。
当面、教職員の加配や空き教室・空き校舎を活用するなど緊急対策をとるとともに、教職員定数の抜本的改善を行うよう求めます。
特別支援学校については設置基準を策定し、過大・過密の解消を進めるべきです。養護教諭の複数配置や、給食提供へ衛生管理なども必要です。ここにこそ大幅な予算を投じる必要があります。
教育課程については、学習指導要領に拘束されるのではなく、子どもや学校の実態を踏まえて、教職員の集団的議論にもとづく柔軟な教育課程づくりを進めるべきです。
大阪教育文化センターが、「休校措置期間の長さにあわせて優先順位の高いものから授業ができるように計画し、次学年以降に回す項目も考える」などの具体的提言を示すなど、各地での取り組みが始まっています。文科省も、「次年度以降を見通した教育課程編成」を可能とした通知(5月15日)を発出しています。
教職員が子どもたちに向き合うことに専念できるよう、「不要不急」の「教育改革」施策の押しつけは中止すべきです。
心身のケアこそ
政府は「9月入学」導入の検討を始めていますが、いま必要なのはそのために多大な労力や予算をかけるのではなく、子どもたちの心身のケアと学びの保障です。「9月入学」には多くの社会的問題もあり、拙速な導入は行うべきではありません。
コロナ禍のなかで新自由主義的な政策の破綻が明らかになっています。学校教育においても過度に競争主義的な教育政策や学校再編・統廃合、民間委託、教職員の非正規化などが問われています。公教育の市場化・民営化をやめて、教育予算を抜本的に拡充することが求められます。
少人数学級、高校無償化、給付奨学金など私たちが要求してきたことがコロナ禍で切実な課題として浮かび上がり、新たに声をあげる人たちも生まれ、組合への期待も高まっています。運動をさらに広げ子どものいのちを守り、豊かな学びを保障していきたい。