2020年5月24日(日)
「文化芸術復興基金」をつくろう
映画・演劇・音楽3分野連携
「#WeNeedCulture(我々には文化が必要だ)~文化芸術復興基金をつくろう」を掲げ、映画、演劇、音楽の3分野の関係個人・団体が連携して政府に「文化芸術復興基金」創設を求めるリレートーク番組を22日夜、ウェブで発信しました。3分野が共同して国に支援を求める動きはこれまでにない画期的なもの。
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出演したのは、俳優で劇作家協会会長の渡辺えり、俳優・演劇プロデューサーの小泉今日子、劇作家・演出家の土田英生の各氏など。渡辺さんは「小さな星が集まって大きな宇宙になった。この手を離さないでやっていきたい」と述べ、小泉さんは「文化はこれからが出番。心に穴があく人が出てきて、その穴を埋めるのが文化」と話しました。
のんさん(俳優)、森達也さん(映画監督)などの個人や照明・音響など関係団体から寄せられたメッセージが読み上げられ、中継で俳優の井浦新、川瀬陽太、田中要次、古舘寛治の各氏、音楽家の大友良英さんらが登場し意見を交わしました。堀潤さん(ジャーナリスト)、想田和弘さん(映画監督)、インドネシア・韓国の演劇・映画関係者やベルリン在住の音楽関係者もビデオメッセージや中継で参加しました。
「仕事を辞めざるをえない」など基金創設を求める切実な声が出され、「アーティストは生命維持に必要不可欠な存在」「文化の多様性を守りたい」などの思いを共有しました。のべ10万5千人以上が視聴。番組動画はウェブ上で見られます。
各氏のトーク
小泉今日子氏 どう社会とつながるか考え直す
古舘寛治氏 声を上げること知った
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映画監督の諏訪敦彦氏は「一人一人違うから、多様な文化が存在することで『この私』に触れるものに出会った時、救われる。芸術・文化の多様性と自由を守りたい」と述べ、基金について「日本が芸術・文化をどう考えるかの指標になる。文化を大切にする国であってほしい」と願いを語りました。
NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」の音楽担当などで知られる大友良英氏は、文化・芸能人を含む多くの人が声を上げ、検察庁法改定案が見送りとなったことを念頭に、「小さい石を投げ続けて動いた。社会と接続し、法律や税金など、今の状況に物を言うのは当然。『私はこう思う』と議論が深まる。みんなが物を言える社会に変わっていくといい」と語りました。
歌手、女優として活躍、現在はプロデューサーとしても演劇に関わる小泉今日子氏は「自分の仕事は自由なことをやる職業で、社会的な問題とは相反すると思っていた。でも、成熟した国に文化は根付く。個々がどう社会とつながるかを考え直し、人任せにせず、権利もしっかり持って、作品づくりをしていくことが必要」とのべました。
俳優の「のん」氏は、「今そこに生きている。同じ空気を吸っている。(映画館の)あの集中力は、ほかでは味わえない。演劇は明日へ向かう力になる」とメッセージを寄せました。
ベルリン在住の音楽ライターの浅沼優子氏は「ドイツでは、国籍を持たない人を含むすべてのフリーランス、小規模事業者に5000ユーロ=約60万円が申請して丸1日後に振り込まれた上、ベルリン州では家賃滞納での追い出しが禁止されたので、日本のように閉店に追い込まれることがない」と報告。「商業ベースにのらないものを支援することが、社会の多様性、文化を育てる」と語りました。
韓国の演劇プロデューサー、バンジヨン氏は、「韓国では文芸振興基金から516億円が支出された」と話しました。
ジャーナリストの堀潤氏はNHK在職時代に企画した、ロサンゼルスで約50年隠ぺいされてきた原発事故や福島第1原発事故など日米の原発事故を扱う報道が突然取りやめにされたことで、「大勢の被災者がいるにもかかわらずお蔵入りにできない」とNHKを退職。その時に「映画化しよう」と映画配給会社が駆け付け、ミニシアターが発信してくれた経緯を語り「ミニシアターは、報道に不信感や怒りをもった大勢の視聴者に対して発信していく大切な場所でもある」と語りました。
俳優の古舘寛治氏は、「日本では文化・芸術の社会的地位が低い。それに対し、いま、みんなが連帯して声を上げ、行政に態度を変えてくれと動いている。コロナ禍で大変ではあるけれど、連帯するチャンスをもらって、声を上げることを知ったことは大きなプラスと受け止めたい」「連帯しなければ社会は動かない。連帯を一過性のものにせず、今後も文化・芸術のために声を上げ続けるというふうに、僕たちが変わっていけばいい」と強調しました。
俳優の田中要次氏は、「山形のミニシアターは閉館に追い込まれてしまった。ミニシアターを守るため、(クラウドファンディングなどでお金が集まっているが)募金で助け合うことが成立してしまうと、国が何もしてくれない気がして、政府に早く何とかしてほしいと投げかけたい」と発言。「2カ月のブランクで、ひげが生えてイメチェンになった」とユーモアをまじえて語り、「これを機に新しいカルチャーが生み出せるチャンスかもしれない」と呼びかけました。
ミニシアター支援の取り組みを起ち上げた俳優の井浦新氏は、「今の事態に対して一人でできる限界にぶつかり、俳優たちが集まって、何か行動を起こしたかった。若い頃、僕はミニシアターで文化と出合い救われて今がある。子どもたちにそういう場を残したい。今は『ミニシアターパーク』を作った。支援型のトークライブなどをやっていきたい。ウィーニードカルチャーを全力で応援する」と語りました。