2020年5月20日(水)
主張
検察庁法案見送り
国民が声上げれば政治は動く
安倍晋三・自公政権は18日、検察幹部の定年を政府の意向で特例的に延長することなどを可能にする検察庁法改定案の今国会での採決・成立を断念しました。インターネットなどで急速に広がった反対の世論と運動、野党の共闘と論戦による画期的な成果です。「国民が声を上げれば政治は動く」。このことを劇的な形で示しました。
「ツイートは世論体現」
改定案は、現在63歳の検察官の定年(検事総長は現行も65歳)を段階的に65歳に引き上げるとともに、役職定年を導入することなどを柱にしています。大きな問題となっているのは、検察幹部の定年と、63歳になれば幹部ポストを退く役職定年を、内閣や法相の判断で延長できる特例が盛り込まれていることです。政権にとって都合のいい幹部だけを恣意(しい)的にその役職にとどめることができるようになり、憲法の基本原則である三権分立や、検察に求められる独立性・政治的中立性を脅かすものです。
改定案を強行しようとした安倍・自公政権に対し、市民が立ち上がり、ツイッター上の「#検察庁法改正案に抗議します」の投稿は数百万の規模に上りました。俳優や歌手、作家ら著名人も次々と声を上げ、日本弁護士連合会会長や、元検事総長ら検察OB、東京地検特捜部OBも異例の反対声明・意見書を発表しました。
「朝日」が16、17日に実施した世論調査では、改定案に「賛成」は15%にとどまり、「反対」は64%になり、成立を「急ぐべきだ」はわずか5%、「急ぐべきではない」は80%にもなりました。安倍内閣の支持率も4月調査の41%から33%に下落しました。
自民党の石破茂元幹事長も自身のブログで「ツイート件数の激増は、世論を体現するものでしょう。検察OBの方々の意見は、正義と公正を実現すべく検察官の職に人生をかけてきた方々の思いとして大きな力がありました」と認めています(18日)。
野党の国会論戦も、安倍・自公政権を追い詰めました。
安倍首相は今回の改定案の下で「恣意的な人事が行われることは全くない」と繰り返しています。このため野党は、定年延長や役職定年延長の具体的な基準を示せと迫りました。しかし、政府は施行日までに定めるなどとし、事実上、答弁不能になりました。
政府が具体的な基準を示せないのは、そもそもそれが不可能だからです。政界の贈収賄事件などの捜査・訴追を任務の一つとする東京地検特捜部OBが森雅子法相あてに提出した意見書(18日)は「これまで多種多様な事件処理等の過程で、幹部検察官の定年延長の具体的必要性が顕在化した例は一度もありません」と明確に述べています。改定案は、検察幹部の勤務延長を時の政権の判断に白紙委任するものに他なりません。
撤回に追い込むまで
安倍・自公政権は改定案の成立を諦めたわけではありません。今秋の臨時国会で採決・成立を狙っています。たたかいは続きます。
問題の解決には、二つの「撤回」が必要です。改定案のうち検察幹部の勤務延長を政府の一存で可能にする特例の撤回と、改定案の発端である黒川弘務東京高検検事長の定年延長という違法な閣議決定の撤回です。そのために世論を一層高めることが求められます。