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2020年5月17日(日)

10万円給付金オンライン申請

混乱うむ マイナンバーカード

自治体情報政策研究所代表 黒田充さんに聞く

 一律10万円を配る「特別定額給付金」の手続きでは、マイナンバーカードを使った「オンライン申請」が可能です。はたして、そのメリットはあるのでしょうか。マイナンバー(共通番号)制度と地方自治体の業務に詳しい黒田充さん(自治体情報政策研究所代表)に聞きました。(矢野昌弘)


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(写真)黒田充さん

 市区町村から届く申請書で給付申請をする場合、印鑑を押します。一方、オンライン申請では印鑑を押せませんから、代わりにマイナンバーカードのICに記録されている公的個人認証の電子証明書を使います。申請時にこの証明書がオンラインで市役所などに届くことで本人からの申請だとみなされます。

 カードを使うのでマイナンバーが関係するように見えますが、オンライン申請にマイナンバーは全く使われていません。そもそもマイナンバーは、複数の行政機関が持つ個人情報をやりとりし、必要に応じて集めることです。しかし、今回の給付金は市区町村が住民票をもとに給付します。他の行政機関とのやりとりは一切ありません。マイナンバーが出る幕はないのです。

 電子証明書は他人が成りすますのを防ぐためのものです。しかし、今回の振込先は申請者の名義の口座に限られ、通帳などの画像も送る必要があります。他人の口座に振り込まれる可能性は極めて低いでしょう。ですからオンライン申請をするにしても、マイナンバーカードを使わないもっと簡易な方法でも可能なはずです。にもかかわらずマイナンバーカードを選択したのは、給付金を一刻も早く届けることより、普及率が十数%と低迷しているカードの普及を優先したからでしょう。

手続きに長い列

 ところで、オンライン申請では世帯主が家族分も合わせて申請します。世帯主の名前はカードの電子証明書に書かれていますが、家族の名は申請者が入力します。そのため受け取った役所側では、家族の名が間違いないかを住民票と照合する必要があります。一方、役所から送る申請書には住民票をもとに家族の名前があらかじめ記入されていますから、職員が照合する必要はありません。オンライン申請の方が、職員の手間が増えるのです。

 多くの役所で、電子証明書の暗証番号の設定など、マイナンバーカードの手続きに長い行列ができています。公的個人認証を管理する地方公共団体情報システム機構のシステムが、大量の請求に応えきれず、うまく動いていないからです。

 このままではオンラインより郵送の方が早く給付金が届く事態もあり得ます。こうなることは、現場の声を聞けば始める前にわかるはずですが安倍政権には聞く姿勢がありません。上で勝手に決め、現場に押し付け、非常時に混乱を生むことばかりをやっています。

紐付けは無意味

 「マイナンバーと口座番号を紐(ひも)づければもっと簡単なのでは」という声もあります。しかしマイナンバーは給付に使われておらず、紐付けは無意味です。もし、次の給付金に備えるなら、市区町村に振り込み用の口座を届け出てもらう方が簡単です。もちろん強制ではなく任意で。児童手当の振り込みや水道料金の引き落としなどで、口座を市区町村に知らせている人はたくさんいます。マイナンバーを活用すれば、給付が簡単にできるというのは間違いです。政府は、幻想をふりまくべきではありません。


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