2020年5月16日(土)
「緊急事態」39県解除 一夜明け
先見えない不安
観光地・飲食店・タクシー 困惑続く
特別措置法に基づく緊急事態宣言が14日、39県で解除されました。一夜明けた15日、各地からは先の見えない状況に不安と困惑の声があがりました。
愛知
「宣言が解除されても何も変わりはない。みんな仕事はない」。名古屋個人タクシー協同組合理事長の麻生清一さんは開口一番、訴えます。
愛知県知事は県独自の緊急事態宣言について月末まで継続すると発表。350近くの個人タクシーが在籍していますが、半数は休業状態です。麻生さんは「一日の売り上げは5千~6千円にまで落ちた。昼食代で千円、燃料代を引いたら悲惨な状況。国が出す10万円給付もまだ届かない」と話します。
電話取材に応じた愛知県タクシー協会は「売り上げは6~8割減」と話します。稼働車両数を大幅に減らしている会社もあります。「公共交通を担うタクシー会社が倒産すれば地域の方の足がなくなってしまう。営業を続けるための支援があれば」と語りました。
沖縄
「大型連休中は、走っている車の3台に1台がレンタカーという感覚なんですけどね。今はまったく走っていませんね」。沖縄県石垣市の観光文化課担当者は話します。昨年4月は12万人超の観光客が石垣島を訪れました。うち約2万3千人がクルーズ船から入りました。今年4月、クルーズ船からの観光客は「ゼロ」でした。
飲食店の経営者(49)は「4月の売り上げは昨年の3分の1程度。5月は半分いくかどうか」とため息をつきます。
石垣市は6日から独自に緊急事態宣言を解除。4人目の感染者が出た4月28日以降、新たな感染者は発生していません。市は「回復プラン」を作成。飲食店には地元客と観光客の混在を避ける対策などを求めています。
飲食店の経営者は「島の人が島外からの知人と一緒に来て別々のテーブルにするなんてできません」と困惑。「夏は電気代が月10万円以上かかります。換気で窓を開ければ、熱風が入ってくる。どうすればいいか。手探りです」
群馬
群馬県嬬恋(つまごい)村で和食温泉ペンションを営む男性(72)は「宿泊客のほとんどは東京など首都圏から。首都圏で解除されない限り、お客さんはゼロに等しい」と嘆きます。
浅間山など三つの日本百名山を望む嬬恋村。5月は例年、多くの観光客でにぎわいますが、「がらんとしたまま」。イベント等もすべて中止です。同県は現在、県外からの観光客へ自粛を要請しており、「(自粛を解く)めどはたっていません」(県担当者)といいます。
さきの男性が営むペンションは新鮮な地元食材を使った和食コースが自慢です。「早くお客さんに来てほしいですが、うちから感染者は出せない。経営は苦しいですが首都圏からのお客さんは、しばらく断らざるを得ない」。今、仲間と周辺に花を植え、収束後の準備をしています。