2020年5月12日(火)
「安心なき放出」戒め
汚染水処分に懸念
政府会合でストア協会
東京電力福島第1原発の放射能汚染水を処理した後に薄めて海に流す案などの処分方法をめぐって、政府は11日、経済団体などに意見を聴く会合を開きました。国民の安心がないもとでの放出を戒める意見が出たほか、風評被害への懸念の声があがりました。
日本チェーンストア協会の井上淳専務理事は、福島県産品と全国の消費者の橋渡しの立場から「安全確保はもとより安心を得ることが重要」と指摘。震災9年後のいまも復興は途上だとして「処理水の対応が、新たな困難な10年を生むことがあってはならない」と強調しました。
井上氏は、処理水は保管してほしいというのが多数の心情だと述べ、うそ、隠ぺい、結論の押しつけをせず、丁寧な議論が必要だと強調。「国民の安心が得られなければ、放出処分をしない覚悟が必要だ」と求めました。
日本スーパーマーケット協会の江口法生専務理事は、新たな風評被害を心配しつつ、通常の販売ルート構築が重要だと述べました。
旅行業界からは「地域の関係者のコンセンサスを得た形での決定なら尊重する。一方、風評被害の発生は避けがたい。長期にわたり観光需要に影響を及ぼす」(日本旅行業協会)という懸念、大量の処理水について「タンクの存在によって旅行・観光面でマイナスの影響が生じている」(全国旅行業協会)という指摘がありました。
経団連は「社会的影響への十分な配慮」を求めました。
同会合は3回目。ウェブ会議で行われました。4月開催の2回は福島県の業界団体や首長から意見を聞きました。コロナ禍で国民的議論ができないもと、政府が延期せずに開催を続けていることに批判があがっています。