2020年4月29日(水)
10万円給付 DV被害者 申請に課題
心理的負担 当時の名前にフラッシュバックも
新型コロナウイルス感染防止にともなう経済対策として1人あたり10万円の特別給付金は、住民票が現在の居住地にないDV(パートナー間の暴力)被害者が、加害者に居場所を知られることなく受け取れるようになりました。被害者に周知する自治体もある一方、申請手続きに課題があることも分かってきました。(和田育美)
東京都東久留米市の女性相談員は市内に住民票のないDV被害者一人ひとりに電話し、給付が受けられる旨を個別に伝えています。
給付金の申請に必要な「申出書」には、婦人相談所、配偶者暴力相談支援センターなどが発行する証明書や市町村が発行するDV被害申出確認書、裁判所の保護命令決定書の謄本または正本の添付が必要です。証明書が手元になく、発行に時間がかかる場合は、相談員が申請に同行し、添付書類がないことを説明します。
丁寧な対応がある一方、給付申請に対して「心理的負担が大きい」と訴える被害者もいます。
首都圏に住む50代の女性は、申請手続きについて「えぐられる感じがする」と訴えます。現在の住居に移転して8年。以前の居住地に証明書の問い合わせをしましたが、資料保存期間が終了しており「発行できない」と言われました。
女性の申請には相談員が同行しますが、まず、面談で相談員に自身が受けた被害を話さなければなりません。「一から話さないといけないと思うと、心が折れそう。心理的水際策のよう」と話します。以前の居住地に問い合わせをすることも、「当時の住所や名前を言って、(記憶が)フラッシュバックしそうになる」状況です。
女性は、「民間の支援団体や法律家でも証明が可能なようにしてほしい」と話しています。
特別給付金の申請期間は24~30日。30日以降も申請は可能ですが、住民票を持つ世帯主が先に申請してしまわないよう、早めの申し込みが求められます。