2020年4月28日(火)
官民のデジタル化政策加速
安倍政権、コロナ理由に
IT(情報技術)戦略を推進する安倍政権が、新型コロナウイルス感染拡大の防止を理由に、従来から政府が財界と練り上げてきた官民のデジタル化政策を一気に進めようとしています。
「この機会に、いわばデジタル・ニューディールを一気呵成(かせい)に進めていく。ピンチをチャンスに変えていく発想が必要だ」。22日、首相官邸で開かれたIT総合戦略本部と官民データ活用推進戦略会議の合同会議で安倍晋三首相はこう訴えました。
首相は、新型コロナウイルス感染症に対して「ITやビッグデータなどあらゆるテクノロジーを駆使して対峙(たいじ)していかなければならない」と強調。政府が行ったオフィス業務の原則テレワーク要請、初診も含めたオンライン診療の解禁にふれるとともに、行政手続きのデジタル化の前倒しやオンライン教育の加速を求めました。
内閣官房IT総合戦略室が同会議に提出した資料には、コロナ禍のもとでの遠隔教育やオンライン診療などの「特例的」「時限的」規制緩和政策が記載されていますが、従来の規制の意味や、緩和により生じうる問題点も含めた吟味が求められます。
また同資料は、今後の取り組みの方向性として、企業から提供される統計データの活用によるクラスター(感染者集団)対策とともに、濃厚接触者となった可能性のある人への通知を行うアプリの実現を明記。一方で、データの収集と利用のさいには、プライバシーや個人情報の保護に配慮する必要があることにもふれています。
この問題では、各国でもアプリの開発や利用などで同様の動きが進み、懸念も広がっています。2日には、世界の100を超える非政府組織(NGO)が、感染拡大防止のためのデジタル監視技術が「人権侵害や広範な監視システムの運用に利用されるべきでない」とする共同声明を発表。各国政府が満たすべき条件として▽正当な公衆衛生上の目的に基づく合法的なもの▽適用範囲と目的が明確で透明性がある▽運用期間を感染爆発に対応する間に限定する―などを挙げています。