2020年4月20日(月)
感染者動向 アプリで監視 欧州
プライバシー侵害に懸念も
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、欧州各国が協力しスマートフォンを活用して感染者との接近を知らせる「コロナアプリ」活用の試みが始まっています。ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)などの国際人権団体は、非常時を理由にしたデータ収集がプライバシー侵害を招きかねないと警鐘を鳴らしています。
独仏伊など欧州8カ国の起業家や研究家らが共同で進める「PEPP―PT」計画が開発したこのアプリは、ドイツ連邦軍が試験的に使用しており、近く一般利用が可能になる見通しです。
利用者がアプリを取得すると、近距離無線通信を通じ、他の利用者が一定距離内に近づいた履歴が携帯端末に記録されます。後に利用者から感染者が出た場合、その利用者と至近距離にいた人に通知される仕組みです。
開発側は、利用者が暗号化されたIDで識別され、位置情報や個人IDを使う手法に比べ個人のプライバシーが守られるとしています。PEPP―PTの開発責任者、クリス・ボース氏は「位置情報は不要で、集めない」と述べています。
これに対し、人権団体は人権侵害を引き起こす恐れがあると懸念を表明。15日付スペイン紙パイスは、同アプリ開発が「倫理的、法的に大きな議論を呼んでいる」と報じています。
HRWなど世界の100を超えるNGOは2日、感染拡大防止のためのデジタル監視技術が「人権侵害や広範な監視システムの運用に利用されるべきでない」とする共同声明を発表しました。
声明は、各国政府が満たすべき条件として▽正当な公衆衛生上の目的に基づく合法的なものである▽適用範囲と目的が明確で透明性がある▽運用期間を感染爆発に対応する間に限定する―ことなどを挙げました。(桑野白馬)