2020年4月16日(木)
感染防止 養護教諭頼み
“国が物資やマニュアルを”
「保健室がクラスターになりかねない」
マスクも消毒液も足りないけれど、感染が疑われる子どもの対応は待ったなし…。学校での感染予防の最前線に立つ養護教諭は、不安をかかえています。(堤由紀子)
休校にはならず、通常通りの授業が進められている学校では、手探りで感染防止対策が行われています。
「熱がある子がいましたが、家へ連絡してもなかなかつながらなくて。換気のためにずっと窓を開けて、『ごめんね』と言いながら、あまり近づかないようにしていました」
こう話すのは新潟県の養護教諭です。ほかにも具合が悪かったり、けがをしたりした子どもがきます。「待機する別室がなければ、保健室がクラスターの発生源になりかねません」
マスクも消毒液も不足。「消毒液が足りないところは取りに来るように」と言われて教育委員会に出向いたものの、もらえたのはほんのわずか。「教育委員会も物資の確保に苦労しているようです。物資の調達や対応マニュアル作りなど、国が率先してやってほしい」
緊急事態宣言で休校中でも、再開後の対応に苦慮しています。
「感染を避けるために、保健室の机の前に、コンビニなどにあるビニールカーテンをつけてもらいました」
こう話すのは、埼玉県内の高校の養護教諭です。「国も県も『熱のある生徒は保健室へ』というだけで、対策は学校に丸投げです」
公立高校の学区が広域化する中で、感染の不安は尽きません。「混雑したバスや電車で、1時間半かけて通学する生徒もいるんです」
感染防止 最前線の養護教諭
体制整備待ったなし
生徒が学校に来てから発熱して、帰宅させる場合の手段も問題です。「保護者と一緒に公共交通機関で帰ってもいいのか。かといって、どの家にも車があるわけでもありません」と高校教諭は悩みます。
いつもならこの時期に行われる健診の予定も立ちません。東京都内の中学校の養護教諭は「緊急事態宣言がこの先どうなるかもわからず、どうにもならない」と言います。
学校医などとの調整が必要な上、健診を2学期に持ち越せば、先送りするほかの学校行事と合わせて過密スケジュールになってしまう…。「このままでは“教育活動”優先で省かれてしまうのでは、と心配しています」
全教が緊急要請
各地の教育委員会への要請に活用できるよう、全日本教職員組合(全教)養護教員部は緊急要請書のひな形を作りました。
要請書では学校で子どもへの感染を防ぎ、いのちと健康を守るためには「教職員の健康管理に万全な体制を取ることが不可欠」だと強調。同時に、子どもや教職員の保健室利用が増えることが想定される中で、「必要な対応ができるように体制を整えることは喫緊の課題」だとしています。
学校生活に関わる要望は▽クラスター発生場所とならない条件整備と、設置者による詳細な対応マニュアルの作成▽マスクや消毒液、体温計、液体せっけん、ペーパータオルなどの予算措置や物品の早急な配布▽感染が疑われる児童・生徒の待機場所の確保―などです。