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2020年4月14日(火)

家族の労賃 経費と認めよ

所得税法56条廃止・見直し 543議会が意見書

 商店や農家などの自営業に欠かせない家族従業者の「働き分」(自家労賃)を必要経費と認めない所得税法56条の廃止や見直しを求める意見書可決(趣旨採択を含む)が543自治体議会に広がり、全自治体の3割にのぼっていることが、全国商工団体連合会婦人部協議会(全婦協)のまとめで分かりました。

 各地の民主商工会婦人部が議会請願に取り組んできた成果です。

 意見書を可決したのは宮城、三重、富山、石川、奈良、香川、徳島、高知、大分、宮崎、沖縄の11県と、191市269町72村(可決後に市町村合併で消失した町村を含む)です。

 高知県では2019年7月までに、県議会をはじめ34市町村議会すべてで達成しました。高知県議会は、07年に全国の都道府県議会で初めて意見書を可決しています。

 所得税法56条では、家族従業者の働き分は事業主の所得となり、配偶者で年間86万円、配偶者以外の家族で年間50万円が控除されるのみで、時給に換算すると最低賃金にも達していません。このため、自営業者の配偶者や家族は社会的にも経済的にも自立しにくく、社会保障や行政手続きなどの面で不利益を受けています。後継者育成にも大きな妨げとなっています。

 国連女性差別撤廃委員会は2016年、「女性の経済的自立を妨げている」と懸念を表明し、「所得税法の見直し」を日本政府に勧告。各地の税理士団体や日本弁護士連合会なども廃止や見直しを求める意見書を出すなど、運動が広がっています。

「税逃れ」防止 根拠消滅

 所得税法56条は「個人事業主と生計をともにする親族が事業から受け取る報酬を必要経費と認めない」規定です。この規定が必要とされる理由として、財務省は、家族に対して高額の給与を支払うかたちをとって意図的に「所得分割」をおこない、納税額を低くすることの防止をあげています。

 自営業者の納税は「白色」と「青色」の申告に分かれています。青色で申告すれば、家族従業者の働き分を経費に算入することができます(所得税法57条)が、これは税務署長への届け出と記帳義務などの条件付きであり、申告の仕方で納税者を差別するものです。しかも、14年からすべての中小業者に記帳が義務化されたことから、「税逃れ」の防止を理由にする根拠はなくなっています。

 全婦協は1974年の結成当初から、経営を支える家族従業者の労働を正当に評価しない所得税法56条の矛盾を告発。憲法の「個人の尊重」(13条)、「職業選択の自由」(22条)、「財産権の保障」(29条)の理念に反すると訴え、学習会や宣伝、署名、要請にとりくんできました。

 15年に閣議決定された第4次男女共同参画基本計画は「女性が家族従業者として果たしている役割が適切に評価されるよう、税制等の各種制度の在り方を検討する」と明記しています。

 世界の主要国は、家族従業者の働き分を必要経費と認めています。

賃金換算するのが基本

全国商工団体連合会婦人部協議会 塚田豊子会長

 全国各地の民主商工会婦人部や女性団体などが議員さんや自治体に働きかけ「所得税法第56条廃止を求める意見書」が可決されています。

 この運動は、以前から行っていますが、2016年に国連女性差別撤廃委員会が、「家族従業者の働き分を認めない所得税法は見直しを」との勧告を日本政府に出したことに励まされ、取り組みをさらに前進させてきました。

 この問題は、働くことにかかわる基本のキで、法律によって働いたことを、働いたことにされないのはおかしいでしょう。同時に、家族従業者の多くが配偶者であり、その多くが女性でもあることから、ジェンダー平等を実現するうえでも重要な課題です。

 中小零細企業は、この56条があることによって工賃自体が安く抑えられています。そのため会社としては、給料を出すことができないくらいの利益しかないような状態にされているのです。

 金額の多い少ないにかかわらず、働いている時間をきちんと賃金換算してください―というのが基本だと思います。これが実現してこそ、社会全体の働く人すべての労働が正しく評価され、賃金の底上げにつながるのではないかと思います。

 引き続き議会請願に取り組み、6月議会以降も各地で自治体決議をあげ、早期に廃止を実現させたいと思います。


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