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2020年4月2日(木)

新型コロナ対策 政府は「自粛と一体で補償する」と宣言を

BSフジ「プライムニュース」 志位委員長の発言

 日本共産党の志位和夫委員長は3月31日放送のBSフジ番組「プライムニュース」に出演し、新型コロナウイルス感染症の拡大に対する政府の対応と、日本共産党の見解について、2時間の番組で縦横に語りました。聞き手はフジテレビの反町理解説委員長と竹内友佳アナウンサー。コメンテーターは時事通信の山田惠資解説委員です。


 最初に新型コロナ感染症の現状認識について問われた志位氏は「大変深刻な状況で、爆発的な感染拡大にさせてはならない、大変大事なところにきていると思います」と述べました。(新型コロナウイルス対策特集ページ

緊急事態宣言どう対応

党として判断する情報を持たない。私権制限は抑制的に、何より補償が必要

 まず改定インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令への対応が議論に。

 志位氏が31日の記者会見で「緊急事態宣言については政府が判断することで、党として判断する立場にない」と表明したことについて、法改定に反対したときと変化しているのかと問われました。

 志位 変化はしていないのです。特措法に反対した理由は、緊急事態宣言の発動の要件があいまいであり、私権が制約されるわけですが、その歯止めがあいまいだということにありました。ただ緊急事態宣言、あるいは私権の制限について、これが感染拡大を防止するために(必要な場合には)、頭から反対だというものではないのです。

 ただ、判断するのは、やはり政府がその責任において判断すべき問題です。私たち野党は特別の情報を持っているわけではありません。ですから、われわれは、判断する立場にない。

 反町 そうすると、政府の説明を踏まえて、党として、支持する、ないし反対する、そういうことになるということですか。

 志位 政府が、緊急事態宣言が必要だとしたときは、まず専門家の意見を十分に聞くこと、そして国会と国民に十分に説明すること、これはまず絶対必要です。それから、私権の制限は、これは抑制的にする、乱用を慎むことは当然必要です。そして、何よりも大事なことは、私権を制限した場合は、補償が必要だと(思います)。

 反町 中身の話ですか、手続きの話ですか。

 志位 (ただすべき問題は)手続きと中身と両方ある。

いまの最大の焦点は何か

政府は、自粛と一体に補償を行うと宣言するべき

 志位氏はここで、自粛要請、私権制限に対する補償の必要性について深く解明しました。

 志位 いまの最大の焦点、政府が出すべき宣言は、自粛とセットで補償をやる、これを宣言することです。

 この間、政府は、さまざまな自粛の要請を出してきました。たとえば、密接、密閉、密集の「3密」は避けようと、これは当然の要請です。イベントの自粛要請、いろいろな自粛要請を出してきた。

 ところが、それに見合う補償を出しているかというとやっていない。

 反町 なるほど。

 志位 これが一番の問題です。たとえば多くの飲食店が店を閉めようかどうかと迷っていますよね。感染防止のためには、店を閉めたほうがいいだろうと。しかし、それをやったら、もう店は立ち行かなくなる。固定費はどんどん出て行く、家賃は払わなくてはならない。水光熱費も、給料も払わなくてはならない。借金はどんどんかさむ。それで収入はないというわけにはいかない。そういうことで、やむなく店を開けているところも多い。

 ですから、そういうお店に対しても、あるいはイベントの関係者に対しても、補償はドンとやりますと、これをきちんとやると宣言して、安心して休業ができるようにする。これを政府はやっていない。

 山田 補償がない形で自粛を求めても効果がない。逆にいえば、補償がある自粛はかなり効果があると思います。最悪は、補償なき強制です。いまはその補償と自粛との関係が甘い。それが機能していれば、緊急事態を本当に発動する必要があるかどうか。

 反町 緊急だから出すわけで、与野党間の交渉をやることによって時間がかかることはどう考えますか。

 志位 いまの焦点は、緊急事態宣言を出す、出さない、どちらにいくにしても、緊急にやらなければならないことは、自粛とセットで補償をやるという宣言だと思います。これがないと、感染防止の実効性が担保されません。

 これはドンと現金を出す必要がある。この現金は、経済対策とか、景気対策とかということではなく、感染防止対策として出す。つまり、自粛に協力している方は、たとえば居酒屋がだいぶ店を閉めていますが、感染防止に協力しているわけです。だから、それに対してきちんとお金を出す。これは総理が決断して、「出します」といえばやれることです。

ヨーロッパでは、労働者・小規模事業者・フリーランスへの補償をやっている

 反町 ヨーロッパでは罰則つきで自粛を命令している。

 志位 ヨーロッパでは、たしかに罰則でやっています。ただ、日本では法律のたてつけも「罰則で」とはなっていませんし、とるべきではない。

 罰則をやらなくても、きちんと補償をセットでやれば、実効性がでてくる。ヨーロッパの場合も、たしかに罰則はそれぞれありますが、感染防止を主に罰則に頼ってやっているわけではない。補償をものすごくやっています。

 たとえば、イギリスについて言えば、労働者、自営業者、フリーランス、1カ月で最大2500ポンド、33万円、所得の8割は補償する。そうしたら安心して休めるわけです。フランスは働く人の(賃金の)10割補償です。それからドイツを調べると、10人までの小規模事業者の場合は、180万円一括で出す。それから5人まで、あるいは個人の自営業、フリーランスの場合は108万円、一括で現金で出す。やっぱり、それが一番の外出の制限、これを担保するものになっている。

 反町 十分な補償がある場合には、私権制限も受け入れるということですか。

 志位 日本国憲法でも、「公共の福祉」のため、人権がぶつかりあったときに一定の制約が必要だというのはあるわけです。感染の爆発的な拡大を抑止するための一定の人権の制約は必要だと考えております。ただ、その場合には補償がいる。外国でやっているような罰則つきのやり方は必要ないし、補償をしっかりやれば罰則なしでもやれますよ。

リスクコミュニケーションが重要――ここが決定的に弱い

 志位氏は、感染防止の実効性確保には政府と国民の信頼が重要だと強調しました。

 志位 もう一つ大事なことは、補償と同時に、リスクコミュニケーションをきちんとやる。つまり、いまの自粛がどれだけ大事なのかを、政府のトップリーダーが、国民に対して懇切丁寧に、心を込めて訴えることが必要です。

 反町 説明努力ですね。

 志位 説明努力と信頼が必要です。

 反町 安倍政権にはないと。

 志位 私は弱いと思う。決定的に弱い。

 山田 そうだと思います。

 今、何が最悪になるかというと、医療崩壊が起きてしまうことで、そこを防ぐためには私権制限も必要です。外出自粛で今回、求められているのは、もちろん感染拡大の防止もありますが、重症者をいかに生まないか、重症の方をいかに死に至ることを防ぐかで、この治療の部分も、当然、緊急事態のなかに含まれてくる。

医療体制をどうするか

病院が安心してベッドを空けられる状態にするためにも財政的補償が必要

 志位氏は、山田氏の発言を受け、病院のベッドの確保や医療資材確保のために、国が財政措置をとることの緊急性を訴えました。

 志位 今のお話でいいますと、これから重症の方が増えた場合に、治療のためにベッドを確保しなければなりません。

 その場合、たとえば、東京都の場合、(急性患者のために)ベッドを空けて待っていますと、(病院の)収入が3分の1になってしまう。(1ベッドあたり)3万円の収入が1万円になる。国がいま、都道府県に対して、(感染が)ピークの時の体制をつくってくれと要請していますが、それに見合った財政措置がでていない。(イベント自粛要請などと)同じ問題があるんです。つまり、病院の側からしたら、ただでさえ病院経営が大変な時に、ベッドを安心して空けられる状態にするためには、財政的な措置をつけないと、安心してベッドを空けられない。

 それからやはり、マスク、あるいは防護服、人工呼吸器、これらを当然、用意するのは必要だけれども、やっぱり同じ問題がある。やはり、医療提供を要求するのなら、ここでも財政措置がなければできない。

 感染拡大を防止するために、自粛を求めるなら、それに見合う補償が必要だ。それから、医療機関にベッドを空けてくれと言うのだったら、(財政)補償措置がこれも必要だと。ところが両方とも政府はメニューを出していない。これを即時、出す必要があると強く言いたい。

 山田 そう思います。今の補償という言葉の意味は、感染拡大だけではなく、まさに最後は、医療崩壊を防ぐことに向かっていると思います。

 反町 そういう緊急財政措置をやるためにもね、緊急事態宣言というプロセスは必要かなと。

 志位 それがなくてもできます。私たちは、今、言い出したことではなく、自粛の要請をするのだったら、補償をやりなさいと前から言っている。

 ところが、2020年度予算にはコロナ対策は1円もない。私たちはもっと最初の段階で予算を組み替えて、コロナ対策費をどんどんつけろ、あるいは参院にまわった段階では修正しろと言ったけれど、政府はまったく耳を貸さないで、ここまできている。遅れている。本来だったら、もっと早くに、補償措置、それから医療の体制をとっておくべきだったのです。

PCR検査――医師が必要と判断したら迅速に検査が受けられるように

 次に、政府の感染防止対策の中身について議論になり、志位氏は、新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査の遅れを指摘しました。

 志位 (ベッドに対する財政的)補償措置がないという大きな問題に加えて、重症の防止策のところで、検査という問題がある。

 いまPCR検査を受けようとしますと、「帰国者・接触者相談センター」にまず相談しないといけない。ところが、この「相談センター」に相談した人のうち、「帰国者・接触者外来」に行ける方は4・6%しかいない。そして検査された方は3・4%しかない(2月1日~3月22日累計)。ですから目詰まりになっている。

 医師が必要とする方の検査は迅速にできるようにすると政府は言っていますが、実態はそうなっていない。実際は、「相談センター」を通さないとできないしかけになっています。1日検査する能力が8000人あると言っていますが、実際は1300人ほどしかやっていません。

 これを、医師が必要だと判断する方については、迅速にPCR検査ができるようにする。重篤化を防ぐ意味でも、絶対に必要だと思います。

安全・迅速・簡易な抗体検査を検討し、実行すべき

 それからもう一つ、検査の点では、抗体検査を導入する必要があると思います。これは、ウイルスに感染したかどうかを免疫で検査するやり方で、少量の血液ででき、(被ばくの)危険もない。迅速にできるし簡易です。イギリスの場合、政府が350万キットを注文しています。日本も、抗体検査をぜひ検討し、実行するべきです。そうしますと、かなり状況が変わってきます。いろんな意味で新型コロナを制圧していく、新しい条件を得ることができます。

 ですから、重篤化を防ぐのは三つだと思います。一つは、いま言った検査の抜本的充実。二つ目は、ベッドを安心して空けておくことのできる財政的支援。三つ目が、マスク、防護服、ゴーグル、人工呼吸器、そういったさまざまな資材、機材を敏速に供給することです。

 反町 とにかくPCR検査を受けたい人は誰でも受けられるようにしたいという趣旨ですか。

 志位 私たちは、悉皆(しっかい)検査みたいなことを主張しているわけではないのです。いろんな症状があったりして、医師が必要だと判断した方の検査がやれていない。これは直す必要があると言っている。

 それから抗体検査という、安全なやり方での検査の方法があるのだから、これを合わせ技でやっていった方がいい。

かかりつけ医が必要と判断したら、「接触者外来」に行けるようにする

 反町 それはいま、日本医師会が、かかりつけ医を窓口にして、地域の患者さんと向き合いのなかで、相談を受けた上で必要なら、「相談センター」を飛ばして「接触者外来」にというあの形ですか。

 志位 そうです。

 反町 医師会が進めているあの形に、共産党は賛成?

 志位 そうです。今のやり方だとかかりつけ医に相談して、そこでお医者さんが必要と判断しても、一回「相談センター」へ通さなきゃならない。ここで詰まってしまうわけです。ですから、「相談センター」を飛ばして、お医者さんが必要だと判断したら、「接触者外来」にいけるようにする。そして「(接触者)外来」を拡大していく。そういう対応ができるようにすべきだと主張しています。

 反町 そのたくさんPCR検査を受けることが本当に治療につながるのか。PCRが1日1300件というのは、たしかに安心感を提供していないけれど、医療崩壊は起こしていません。その医療崩壊、つまり持続可能性と安心感のバランスをどう取るべきか。

 志位 8000人の検査を目いっぱいきちっとやって、医療崩壊が起こることはないです。かりに、医療供給の問題が起こったとした場合でも、症状がない方、あるいは本当に軽度な方、これはいろいろな(対応の)方法があります。入院しない方法だっていろいろある。ですから、いろんな組み合わせで(対応すれば)、ただちに医療崩壊が起こる状況ではない。8000人の検査能力があるのにやれていないのが問題なのです。

 しかも政府は、医者が必要だと判断すればみんなPCR検査ができますと、保険適用になったのだからできますと言ったのにさっぱり進まない。だからやっぱりそこは進める必要がある。「相談センター」を通さなくても、「接触者外来」にいけるルートをつくることが必要だと思います。そして合わせ技で抗体検査をやる。

 山田 そうですね。これから医療崩壊するかもしれない中で、検査の数を増やすことには二つの意味があって、陽性の人をすぐ見つけ、この方々はキャリアーでもあるし、それからまた重症予備軍でもあるという位置付けで、様子を見なくてはいけない。

急性期病床削減、公立・公的病院統廃合計画を撤回せよ

 ここで志位氏は、政府が進める急性期病床削減、公立・公的病院の統廃合計画について厳しく批判しました。

 志位 医療にかかわって一言言っておきたい問題があります。

 政府が「地域医療構想」というのを進めている。これはどういうことかというと、2025年までに全国の高度急性期病床と急性期病床を合わせて20万床減らせという号令です。そのために、全国424の公立病院・公的病院の統廃合を、名指しで出している。これがいま、地域医療の大問題になっています。

 政府は、コロナのまん延に備えて病床を空けてくれと言っておきながら、もう一方では削れという。空けろといいながら削れと。これはいくらなんでもおかしいじゃないですか。

 先日、(参院予算委員会で)わが党の田村政策委員長が、せめてコロナが収束するまでは、病床削減計画は棚上げにしろ、やめなさいと言いました。そこで厚生労働大臣がなんと言ったかというと、「並行して進める」というのです。

 反町 減らしながら増やす?

 志位 こんなバカな話はない。私は、この地域医療を削っていくというやり方は撤回すべきだと強く言いたいです。

「全国一律休校要請」

科学的知見なしの「政治決断」がひずみをつくった――厳しく反省すべき

 次いで安倍首相が行った「全国一律休校」要請をどう見るかが質問されました。

 志位 全国の小・中学校、高校、特別支援学校のすべてに一律休校の要請を出したやり方は間違いだと批判しました。地域によっていろいろじゃないですか。それを全く考慮に入れていない。

 もう一つ、専門家会議に事前にはからなかった。私は、党首会談で、安倍総理に「科学的知見抜きの政治判断は絶対にやめてほしい」と話し、総理も「今後そういうご指摘のないように心がけます」と言いましたが、科学的根拠のない判断が何を招いたか。

 3月19日に(政府の)専門家会議が「オーバーシュート」(感染者の爆発的拡大)という言葉を何度も使い、警告を出しました。しかし翌20日に、学校再開というアナウンスが出た。これまでの一斉休校が「今度は再開か」と緩んでしまったわけですが、再開の理由が立てられない。一斉休校の理由もなかったから。だから再開の理由もない。それが、3連休で緩みをつくってしまった。ですから、科学的知見に基づかない行動をすると、これを是正する時にも、またひずみがでてくるのです。

 私は、総理や政府に求めたいのは、集団的な専門家会議がある。その知見に基づいてやらなかったらダメだと強く言いたい。

 反町 休校は効果がなかった、休校を解除するメリットはこれだけあると、説明が事実上まだ。多分データもそろってないから…。

 志位 何も(説明が)ないんですよ。一律休校要請自体に根拠がないんだから。だからその解除にも根拠を出しようがないんです。休校措置は、感染抑止のために場合によっては必要だと思います。ただまったく一律に上からかぶせるようなやり方が、非常に禍根を残している。今後も、地域によっていろいろなわけだから、自治体の自主的な判断を(政府が)よくサポートするという対応が必要です。

 反町 政府は要望というでしょうけれど、要望であっても一律の強制になる。

 志位 実際そうなったわけです。ただ、結局、一律にはならない。そういう無理なことやっても崩れるわけです。この問題は「政治的決意」や「プレー」で何とかなるもんじゃないんです。科学者・専門家の知見に依拠して、政治が采配をふるっていくことが大事です。専門家会議にもかけないから解除する時にも説明がつかないことになる。これは反省してほしいです。

日本経済をどうする

「二重の打撃」――緊急の補償措置とともに、消費税5%への減税を

 経済対策にかかわって、3月26日に発表された月例経済報告が下方修正され、6年9カ月ぶりに回復の表現を削除されたことが話題になりました。

 志位 そもそも「回復」が虚構だったんです。(2014年に)消費税を8%に上げ、(昨年10月に)10%に上げ、そのことによって長期にわたる不景気だった。昨年10~12月期のGDP(国内総生産)は(年率)マイナス7・1%。コロナの拡大前にこれだけ落ち込んでいた。増税による大不況によって日本経済の土台が壊されていたところにコロナの大打撃がきた。「二重の打撃」がきている。これが現状だと思います。

 また、自民党が出した第3弾の緊急対応策について見解を聞かれました。

 志位 (自民党案には)冒頭指摘した“自粛に対する補償”、この考え方が全くない。一定の給付を出すとあるが、感染防止対策として補償を出すという考え方がないんです。たんなる景気対策としてお金をまくという話しかない。

 もう一つ、消費税減税が必要です。日本経済は「二重の打撃」を受けている。消費税10%によって土台が壊れている。そこに、コロナの打撃がきた。自粛で打撃を受けている労働者、小規模事業者、フリーランスへの補償を真っ先にやる必要があるけれども、同時に、消費税5%への減税を決断して実行すべきだというのが主張です。総理がよく消費税を上げるときに、「リーマン・ショック級のことがあった場合には上げない」と言っていました。いま「リーマン級以上」だと言っているわけで、だったら消費税下げるのは当たり前じゃないですか。

 山田 消費税を引き下げると、財源は必要になってくる。そうすると所得税とか法人税に波及する可能性があるのでそれを避けたい人たちは当然官邸にも霞が関にもいるでしょう。

 志位 いま国会では自民党の議員からも消費税減税(の主張)が出ています。野党も、国民民主党は5%と言っている。立憲民主党も枝野(幸男)代表も消費税も考えないといけないと言い始めている。ぜひ5%で足並みをそろえたい。財源は富裕層や大企業に対する不公平税制を是正し、応分の負担を求めます。

 ただちに「自粛とセットで補償する」、同時に、今から先を考えて消費税5%の政治決断をやる。実施までには少し時間がかかりますので、今から決めておく。

 「二重の打撃」があるわけだから、対策も緊急の防衛策をやるとともに、抜本的な消費税減税を打っていくと。二重でやる必要があると思います。

1回こっきりの給付金では足らない――毎月の補償措置を強く求める

 反町 ワンショットで何兆円を配るというのとは違って、5%1回下げるってことは…。

 志位 ずっとやるということです。コロナを収束させるためにも、いろんな補償措置をやる。生きていけるような状況をつくる必要がありますよね。みんな焼け野原になったら、そこで消費税減税やったってだめですから。生きていけるようにしながら、減税を実行していくことが国民に対する大きなインパクトになる。暮らしと経済に明るい光を、メッセージを出すことになる。

 反町 国民に対する直接給付は、どうお考えですか。

 志位 現にいま困っているわけですから給付金は必要です。ただ給付金は1回こっきりです。例えば、1回こっきり10万円を配ってもそれだけでは暮らしていけません。

 反町 ワンショットの給付金はあんまり、持続性がないという意味で評価されない?

 志位 評価しないわけではないです。ただ給付金は1回こっきりだから、それでは足らない。労働者、自営業者、フリーランスすべてに休業補償を毎月やらなきゃいけない。コロナが収束するまでやらないといけない。

 反町 現金配っても、貯金にまわってしまうから、商品券やクーポン券がいいんじゃないかと。

 志位 これは反対ですね。自民党から「お魚券」「お肉券」などの声が聞こえてきますが、いま商品券に対して怨嗟(えんさ)の声ごうごうですよ。“商品券で家賃が払えるか”と。いま家賃や水光熱費が払えないで困ってる。それは商品券では払えない。現金給付はワンショットでも必要です。ただそれだけでは足りない。補償措置を強く求めています。商品券なんていうのはまったく何を考えているのか。

日本共産党の緊急提案――労働者・自営業者・フリーランスの所得を8割補償

 話題は、共産党が3月26日に発表した緊急提案に移りました。

 志位氏は、緊急提案の一番のポイントは、「自粛に伴う損失を補償する」という考え方にあることを強調したうえで、雇用を維持した企業を助成する雇用調整助成金(雇調金)について、10割補助にし、さらに上乗せをすることなどを提案しました。

 雇調金はこれまで、中小企業で3分の2、大企業で2分の1の助成率で、賃金の6割以上を支給するものです。

 志位 この助成金の割合を10割補助――10分の10にする。それでも賃金の6割ですから、さらに2割上乗せし、賃金の8割は補償しようということが私たちの提案です。雇用保険には積立金が1・3兆円あるんです。こういうときこそ積立金を使って、10割補助に上乗せして8割補償する。

 フリーランスは(休業補償が)、小学校の子どもを持つ方だけなんですよ、たった5%しか対象にならない。しかも1日たったの4100円。フリーランスの方も同じように損害を被っているわけですから、同じ8割の補償をする。働く人もフリーランスも自営業者も8割の所得が補償できるようにしようじゃないかというのが基本的な考え方です。

 それからイベント中止に伴って、ミュージシャンへの出演料や会場費が負担になっているわけです。劇団にしても。イベント中止に伴う必要経費については、逸失利益を補てんするという考え方を提案しています。

 反町 自民党も雇調金、第1弾では要件を緩和して3分の2を維持でした。第2弾で5分の4に上げた。今日発表した自民党の提言ではこれを10分の9まで上げた。共産党さんは10分の10。だんだん寄ってきていると。

 志位 寄ってきたことはいいことだけれども、ケチケチするなよと(笑い)。10分の10やれと言いたい。

 山田 非正規雇用の方々、労働者全体の4割を占めていますから、この方々に対する補償も切実な問題になってくる。

 志位 これは大事な問題です。非正規雇用の場合、雇用保険に入っている方は雇調金の対象になりますが、入っていない方は出ません。非正規雇用の方も、所得の8割の補償をやるとことを求めていきます。

与野党で協力すべきは協力し、積極的な提案をしていく

 山田 もう一つは、スピードが大事だと思うんです。ここは政治的な与野党のテーマであるべきではないと思います。今のこの状況に絶望感を持っている方は本当に途方もない思いでいる人が多い。そうすると、実現するのかしないのかがやっぱり一番大事なことで、この件に関しては、与野党で合意すべきは早く合意すべきだと思います。

 反町 政府・与野党連絡協議会に対する期待度は。

 志位 この問題は党派の違いをこえて、政治が決断してやっていく必要があるということで、協力すべきは協力する。積極的な提案もしてきました。与野党の協議の場でも大いにやっていくつもりですし、やってきました。一定程度は私たちの提案が動かしつつある部分もあると思うんです。

 反町 これまさに引っ張られている感ありますよ。

 志位 もう一つ補償の問題も、総理はこの前の会見で、小規模事業者に対する給付金制度をつくるとようやく言った。国会で何度聞いても、拒否してきたんですが、ここはようやく変わった。ただ「損失補填(ほてん)は難しい」と言いました。まだ中途半端ですが、ようやく給付金をつくるということを言いだした。自粛要請しているんだから、お金出しなさいというのは、誰が考えても道理がある。ぜひこの線で、与野党一致して実現したい。全国知事会も要請していることです。

ドイツの文化大臣が「アーティストは生命維持に必要」断言――こういう精神で

 反町 イベント中止に伴う必要経費で、直接の補填はできないという政府の根拠は。

 志位 補填できない理由はないんです。直接支援は、例えば東日本大震災のとき、中小企業のグループ補助というのをつくり、直接支援をやったのです。そういう自然災害のときですら、やったわけです。今回は新型コロナによる疫病ですが、自粛に伴って起こっているわけで、できない道理はない。

 こういうことをやらないと、劇団も、オーケストラもつぶれてしまう。いったん文化がつぶれたら、再生しないですよ。先がなくなる。だから、どんなことがあっても、きちんと補填して守っていく必要がある。

 ドイツの(モニカ・グリュッテルス)文化大臣が、コロナ対策で「芸術家とクリエーターはどんなコストを払ってでも守る」んだと断言していますでしょ。ドイツの場合、オーケストラが町や村にもあります。文化大臣は最近の発言で、「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ」と断言しています。そういう精神で、いま本当に苦境にある劇団、芸能、ライブハウス、オーケストラなどを救っていく必要あります。

 反町 やっぱり音楽の話をしだすと熱いですね。

 志位 新日本フィルのみなさんは、コンサートがなくなって、テレワークで演奏している。見事なもので、すごい心意気です。補償が必要です。

 反町 薬やワクチンに関しての話というのは。創薬支援とか。

 志位 治療薬、ワクチン。これには最大限の力をそそぐ必要があると思います。国際協力も必要です。特別の体制が必要だと思います。

中国の対応について

初動の問題は明瞭だが、今何より大切なことは国際協力でウイルスを抑え込むこと

 中国・武漢市で新規感染者がゼロになったと発表され、封鎖措置の解除が発表されているもとで、中国の対応について聞かれました。

 志位 これは中国が発表していることであって、事実は分かりません。

 中国について言いますと、やはり初動が遅れた。否定しようのない事実です。その背景として言論の自由がない。体制の問題点があって遅れた。非常に大きな問題だと思います。

 ただ今、中国のさまざまな問題にフォーカス(焦点を当て)して中国をバッシングするやり方は、誰にも利益をもたらさない。いま一人でも命を救うためには、国際協力でやらなくてはいけない。中国とも協力が必要です。中国は、コロナ対策のなかで膨大な論文を出しています。そうした科学的知見も共有し協力しなくちゃいけない。それがいま一番大事だと思っています。

 反町 中国側は、よくわからない空中戦をアメリカとやっている。

 志位 中国外務省の報道官が根拠を示さず「米軍が武漢に疫病を持ち込んだ」といい、トランプ大統領が「中国ウイルス」と。両方がルール破りをやって、紛争になった。これは中国もアメリカも両方とも恥ずかしいことです。二つの大国がいかに協力してウイルスを抑え込むか、協力しなくてはいけない。

綱領一部改定

中国の行動は、「社会主義」とは無縁であり、「共産党」の名に値しない

 今年1月の第28回党大会で、綱領を一部改定し「社会主義をめざす新しい探究が開始」された国という規定を削除したことについて、「中国に対する評価は、随分変わったように思う」と問われました。

 志位 これは大きく認識を変えました。改定前の規定は、2004年の綱領改定で規定したものなんです。

 経過を言いますと、1966年に毛沢東の「文化大革命」の時期に、日本共産党に対する乱暴な干渉をやってきた。日本共産党も武装闘争をやれと。われわれは断固拒否した。そうしたら、「日本共産党は日中両国の四つの敵(アメリカ帝国主義、ソ連修正主義、日本共産党、日本の反動派)の一つだ」と。ひどい干渉をやった。それで関係を断絶した。32年間断絶して、1998年に関係正常化をやったんです。このとき中国指導部は、干渉は間違っていたと認めた。真剣さ、誠実さがあると評価してこういう規定をしました。当時は合理性があったと思っています。

 ところが、この10年来、変化が起こってきた。2008年にチベット動乱に対する制圧行動で犠牲者が出る。2010年には劉暁波さんという作家がノーベル賞をとったときに中国が反発して人権問題が国際問題になりました。さらに08年から尖閣諸島での領海侵犯が始まり、12年の「国有化」をきっかけに本格的にエスカレートした。南シナ海でも力ずくの現状変更をやりだした。明らかな覇権主義が顕著になった。

 反町 そういう流れの中で、この部分を削除した。

 志位 こうした行動は、社会主義とは両立しない。大国主義、覇権主義があらわれてきたと。しかも香港、ウイグルの人権侵害も国際問題になってきた。核兵器禁止条約には背を向けている。全体として、中国の政権党は「社会主義」「共産党」を名乗っているけれども、その行動は、社会主義とは無縁であり、共産党の名に値しないということもはっきりさせて削除しました。

 山田 共産党アレルギーという人に対してアピールするという狙いもあったんだろうなと。

 志位 違うんですよ。そういう政局的な思惑でやっているのではない。さっき言ったような経過、そういう全体の中で見極めて判断した。しかも、こういう批判が国際的に弱いんですよ。日本政府は弱腰で何も言わない。国際的にも批判がなかなか起こらないなかで、日本共産党が批判するというのが痛いんです。

メールでの質問に答えて

 番組には、500件を超えるメールが寄せられ、意見・質問に答えました。

 岡山県の50代男性から「自粛と補償がセットなのは当然だと思いますが、補償付きでみんなが我慢する以上、それを破った者には罰則を設けるのは公平性の観点から見ても絶対に必要だと思います」との意見が寄せられました。

 志位 罰則規定はいらないと思っています。いまの法体系は「緊急事態宣言」をやったとしても罰則はありません。罰則をつける必要はない。きちんとした補償とリスクコミュニケーション。この二つがあればできる。だいたい今から罰則規定をつくる法律をつくるというのは、現実性もありません。

 また、「補償をする際の財源は何か」というメールが多く寄せられたと紹介されました。

 志位 いまの補償はつなぎの国債でやるということです。

 反町 なるほど。もっと大きな財源でいうと、やっぱり富裕層と法人税(見直し)ですか。

 志位 そうです。消費税の減税はいまいったような措置でやっていく。しかしいますぐ出すお金は国債でやるしかありません。


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