2020年3月26日(木)
クローズアップ
「森友」公文書改ざん 再調査 拒むな
元近畿財務局職員 赤木さんの魂の叫び聞け
「どないするんかいな。資材も置きっぱなしやし」。散歩中の中年男性が、朱色の建物を横目につぶやきました。安倍晋三政権による「政治の私物化」の現場です。(渡辺健)
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大阪府豊中市。子どもたちが遊ぶ野田中央公園と大阪音楽大学にはさまれて、その建物は建っています。「瑞穂の國記念小學院」の文字が浮かび、フェンスには「国有地 国土交通省大阪航空局」の掲示。学校法人「森友学園」(大阪市)が開校しようとしていた小学校の建設跡地です。安倍首相の妻昭恵氏はこの学校の名誉校長でした。
この小学校の設立を、規制緩和までして「認可適当」としたのは維新府政でした。
その小学校建設予定地は、国有地を8億円も値引きし学園に売却した土地だったことが発覚。「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員も辞める」という安倍首相の答弁を契機に、財務省による交渉記録の改ざんが行われ、公文書改ざんを強要された近畿財務局の赤木俊夫さん=当時(54)=が自殺しました。
誰が誰のために
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赤木さんの妻が18日、国と佐川宣寿(のぶひさ)元財務省理財局長に計1億1千万円余の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしました。
同日公表された赤木さんの遺書には「これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。手がふるえる 恐(こわ)い 命 大切な命 終止府(符)」と書かれていました。「手記」には、改ざんは「すべて、佐川局長の指示です」と記されていました。
赤木さんの妻は、弁護団を通じて思いをぶつけました。「夫が死を選ぶ原因となった改ざんは、誰が誰のためにやったのか、改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたのか、真実を知りたいです」
本丸に迫りたい
「遺書を読んだ時は、もう言葉にならなかった。あまりにも悲痛で」と言葉をつまらせる木村真豊中市議(無所属)。売却価格を非開示とした近畿財務局の対応は違法だとして大阪地裁に提訴(2017年2月8日)。「森友」問題の火付け役となりました。「赤木さんは思いつめて命を絶ったが、政治家はだれも責任を取っていない。まず佐川氏の証人喚問。だけど佐川氏の独断だったはずがない。『昭恵案件』だったことは明らか。本丸に迫りたい」と木村氏。佐川氏の証人喚問を求める「森友学園問題を考える会」の署名は1万人を超えました。
国会ではじめて「森友」問題を追及した日本共産党の宮本たけし前衆院議員と、値引きの理由とされたゴミは深度3メートル以下にはなかったことを明らかにするなど鋭い論陣をはった辰巳孝太郎前参院議員は19日夕、大阪市・京橋でおこなわれた「おおさか総がかり行動」で木村氏とともに真相解明を訴えました。
調査“される側”
赤木さんの「手記」が公表されても再調査する考えがないと表明した安倍首相と麻生太郎財務相。
赤木さんの妻は23日、自筆のメッセージを発表しました。「安倍首相は2017年2月17日の国会の発言で改ざんが始まる原因をつくりました。麻生大臣は墓参に来てほしいと伝えたのに国会で私の言葉をねじ曲げました。この2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場にないと思います」