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2020年3月20日(金)

地下鉄サリン事件きょう25年

事件終わらず 癒えぬ 悲しみ苦しみ

遺族「心細さ 年とともに増す」 被害者 身体・精神症状が悪化

写真

(写真)地下鉄サリン事件25年にあたって記者会見する右から宇都宮弁護士、高橋さん、仮谷さん、中村弁護士=9日、東京・霞が関の司法記者クラブ

 地下鉄サリン事件から25年。被害者、遺族たちは、いまなお癒えない悲しみ、苦しみを抱えたままです。

 20日を前に行われた記者会見。「地下鉄サリン事件被害者の会」代表世話人の高橋シズヱさん(73)は、霞ケ関駅の助役だった夫の一正さん=当時(50)=を亡くしました。

 「オウム真理教や後継団体からの謝罪や反省の気持ちを感じたことはいまだに無い。一人でいることが心細くなっていく。さびしさ、つらさも年とともに増してきた」

 記者会見には公証役場拉致事件で死亡した仮谷清志さん=当時(68)=の長男、実さん(60)も同席。「悔しさ、悲しみはいまもこみあげてくる。事件は終わっていない」と話しました。

むしろ悪く

 「悲惨な事件の体験者は年数を経たからといって、心身の症状が軽減されるどころか、むしろ悪くなることがある」。サリン被害者の身体と精神状況について調査した松井豊・筑波大学名誉教授(社会心理学)はいいます。

 調査は事件から20年を前に2014年10月から12月に、地下鉄サリン事件被害者の会とオウム真理教犯罪被害者支援機構(理事長・宇都宮健児弁護士)の依頼で、松井さんら専門家のグループが行いました。

 被害者本人299人からの回答を集計した結果、8割前後の人が何らかの「目の異常」を、7割前後の人が「体のだるさ」「疲れやすさ」を、6割前後の人が「めまい」「頭痛」のほか、「恐怖感」「緊張」といった精神的症状を訴えていました。

 事件2年後の調査と比べても、身体、目、精神のいずれの症状も悪化していました。

長期ケアを

 調査結果を詳細に分析してみて、松井さんはこう指摘します。

 「症状悪化は、年代別でみても同じ傾向だ。加齢によるものと説明がつかない。サリン被害者の方たちは、原爆被爆者の方たちと共通する晩発性障害がみられる。オウムの後継団体が活動していることも被害者の方たちの症状を悪くしている要因だ。長期にわたる身体、精神へのケアが必要だ」

 地下鉄サリン事件はじめ、一連の事件の被害者はオウム真理教側に約38億2000万円の損害賠償を請求しました。オウムは1996年に破産。破産管財人は、資産を処分し約15億5000万円を配当しました。

 残った債権は約22億7000万円。破産管財人からオウム真理教犯罪被害者支援機構に債権が譲渡されました。同機構は、オウム被害者救済法にもとづく国の給付金約8億3000万円と後継団体である「Aleph(アレフ)」などが支払った分を除く約10億5000万円の賠償金について「アレフ」などに支払うよう提訴。今年1月、東京高裁は、「アレフ」に10億2500万円の支払いを命じました。

 事件で仕事を続けられなくなり、経済的に困窮している被害者も少なくないといいます。

 同機構副理事長の中村裕二弁護士は「アレフなど後継団体には、賠償する十分な資産がある。一日も早く回収し、被害者・遺族に配当したい」と話しています。(栗田敏夫)


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