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2020年3月20日(金)

主張

森友公文書改ざん

職員の手記の重み受け止めよ

 「森友学園」問題を担当して自殺した財務省近畿財務局の職員の妻が、夫を死に追い込んだのは同省幹部らの公文書の改ざん強制が原因だと、国と当時の理財局長・佐川宣寿(のぶひさ)氏に損害賠償を求める訴訟を起こしました。弁護団は、職員が「すべて佐川局長の指示」などと記した手記と遺書を公表しました。国有地が破格の安値で不当に払い下げられ、公文書の廃棄・改ざんなどが行われてきた森友問題をめぐり、安倍晋三政権の隠ぺい体質が改めて問われる深刻な事態です。佐川氏はもちろん、首相らは真相を明らかにすべきです。

首相答弁をきっかけに

 2017年2月に発覚した森友問題は、首相の妻の昭恵氏が建設予定の小学校の「名誉校長」を一時務めたほか、当時の理事長らが昭恵氏と建設予定の国有地を視察した際の写真を財務省に見せていたことなどをきっかけに、土地の異常な売却がすすんだことが明らかになっています。

 安倍首相は、疑惑発覚直後の国会で「私や妻の昭恵が関係していれば、首相も国会議員も辞める」と明言し、佐川局長らは「資料は廃棄した」などと虚偽答弁を繰り返しました。そして、一度決裁された文書から安倍首相や昭恵氏、その他の政治家の名前がある部分が消されるなどしました。国民の共有財産である公文書の改ざん・隠ぺい・廃棄は、民主主義の根幹を揺るがす大問題です。

 自殺した職員は、国有地を管理する部署に属していました。職員の手記や遺書には、安倍首相の答弁のあと、抵抗したにもかかわらず、佐川局長ら上司の指示で、公文書を改ざんしたり、会計検査院に虚偽の報告をさせられたりしたことなどが、生々しく書き残されています。

 「財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いている」「最後は下部がしっぽを切られる」「手がふるえる、恐(こわ)い」…。一文字一文字からは、財務省が強いた公文書改ざんなど不当きわまる要求に対する怒りと苦悩が伝わってきます。職員は追い詰められ、命を絶ちました。その無念さを思うと言葉がありません。

 ところが妻の提訴を受けて、麻生太郎財務相らは、問題は“決着済み”だという姿勢を変えません。安倍首相のコメントは、「改ざんは二度とあってはならない」などと、まるで人ごとです。断じて許されません。一昨年に財務省がまとめた報告書よりも、遺書にはより詳細な事実が記されています。新たな事態の展開に合わせて、誠実に対応すべきです。財務省は事実関係を再調査し、安倍首相や麻生財務相が国会での説明責任を果たすことが必要です。佐川氏らの国会招致も不可欠です。

人の道に反しないよう

 提訴にあたっての職員の妻のメッセージには、「本当のところを知りたい」「真実を知りたい」と悲痛な叫びがつづられています。佐川氏らが法廷で真実を語るのは当然です。

 まじめに働いてきた職員に改ざんを強いたおもな幹部は、軽い処分だけで責任を取らず、いずれも出世しています。これほど理不尽なことはありません。命の重みをいったいどう受け止めるのか―。首相や財務相らが開き直りを続けるなら、人の道に反すると言わざるをえません。


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