しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年3月17日(火)

やまゆり園事件 判決出ても真相は不明

社会のあり方・優生思想、もっと議論を

 「事件の背景にある社会のあり方や優生思想についてもっと深めなければ」―。16日、横浜地裁のやまゆり園事件をめぐる判決を受け、関係者らは口々に「判決が出たけど、これで終わりではない」と語りました。


 全国障害児者の暮らしの場を考える会事務局長・播本裕子さん(70)は「私たちは『どんな命でもかけがえのない命だ』と訴えてきました。死刑判決は、植松聖被告の“役に立たない命はいらない”の主張と同じこと。被害者の立場からは死刑判決が当然なのだろうけど…」と複雑な胸の内を語ります。

 播本さんの三男(37)は、重度知的障害と自閉症などがあり、入所施設をへて現在は大阪府吹田市のグループホームで暮らします。

 判決は、やまゆり園の利用者を当初は「かわいい」と話したこともあった植松被告が自身の体験を踏まえて数年間で、「重度障害者は不要」だと考えるようになったと指摘します。

権力側の喧伝が

 「障害福祉の現場に余裕がなく疲弊しているのはどこも同じ。植松被告は施設で働くなかで大変な思いをしてきたんだろうけど、その大変さや仕事がうまくいかない思いが、目の前にいる障害者に向かい、国や行政には向かなかったのはなぜか」と播本さん。「制度改善の要求行動にならなかったのは、権力側が、“障害者や社会保障にお金がかかっている”と喧伝(けんでん)していることも影響しているのではないか」

貧しい福祉施策

 障害者団体「きょうされん」の斎藤なを子代表理事は「判決が出たけど、施設職員が引き起こした凄惨(せいさん)で残忍な事件の真相は、明らかになったとは言えません」と強調します。「職員としてかかわりながら植松被告はなぜ、日常の中で起きる“問題”を障害のある人の側からとらえることができなかったのか」と訴えます。

 斎藤さんは、貧しい障害福祉施策そのものを改善し、障害のある人がその人らしく暮らせる社会にしなければ、植松被告のような考え方にとらわれる人はいなくならないのではと指摘します。

 「事件について今後、社会の関心が遠のき、風化するようではいけません。障害のある人への偏見や差別、優生思想に関して今後も問題意識をもって深めあったり、学びあったりしながら発信し続けていきたい」


pageup