2020年3月13日(金)
東電の責任断罪
故郷喪失に慰謝料
福島原発事故・避難者訴訟 仙台高裁
東京電力福島第1原発事故で避難指示が出された福島県沿岸部の楢葉町、浪江町、大熊町、双葉町、富岡町などの住民216人が東電に約18億8000万円の損害賠償を求めた福島原発避難者訴訟(早川篤雄原告団長)の控訴審判決が12日、仙台高裁(小林久起裁判長)でありました。判決は一審・福島地裁いわき支部判決を約1億5000万円上積みし、総額約7億3000万円の支払いを命じました。東電に対し津波対策の工事を「先送りしてきた」と断罪しました。同様の集団訴訟で高裁判決は初。
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判決は、東電に対し、2002年の国の地震予測「長期評価」などで大津波発生の可能性と危険を認識し、市民団体からも繰り返し津波に対する抜本的対策を求める申し入れがあったのに、具体的な対策工事の計画や実施を「先送りしてきた」と指摘。小林裁判長は「誠に痛恨の極み」と述べ、「慰謝料の算定に当たっての重要な考慮事情」としました。
賠償額では、帰還困難区域の住民に対し1人当たり1600万円、うち「ふるさとの喪失による慰謝料」として600万円を認定し、一審判決を上回る賠償を認めました。
さらに、避難後の生活の継続による精神的苦痛とは区別して「避難を余儀なくされたこと自体による慰謝料」として150万円ないし70万円の増額を認めました。
原告団・弁護団は共同声明を発表し、「東電は判決を真摯(しんし)に受け止め、いたずらに上告せずに、話し合いによる解決に努めるべきである」と指摘。「東電は被害救済を先延ばしにして原告らの苦痛を長期化することはもはや許されない」と述べています。
原告ら“正義が通った”
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12日、福島原発避難者訴訟(早川篤雄原告団長)の仙台高裁判決を受け、原告、弁護団、支援者らは口ぐちに喜びと今後の運動への決意を語りました。
早川篤雄原告団長は裁判所の門前で、「『正義が通った』と感激し、震える思いで判決を聞いていました。想像以上の判決です。人間の良識を信じて訴えてきたことが報われました」と述べ、涙をこぼしました。
記者会見で早川団長は、「判決を東電に実行させるためのたたかいが重要になってきます。これからは、奪われた地域と生活を取り戻すたたかいです。今日の判決を起点とし、正義が通るよう頑張っていきましょう」と呼びかけました。
原告弁護団の広田次男共同代表は、「裁判所は生きていたと感じています。これまで14万を超える人びとが避難生活を余儀なくされましたが、提訴している人はその1割にも満たない状況です。この判決を避難者全員に水平展開していく大運動のために、力を尽くしていきたい」と決意を語りました。
各都道府県の原発訴訟原告団も応援に駆け付け、報告集会で「政府におもねる判決の繰り返しを断ち切ってもらえた」「大きな勇気をもらった」「涙が出るくらい希望のある判決です」と喜びの声をあげました。
いわき市民訴訟の伊東達也原告団長は、「いわき市でもこの判決を伝え、これまで裁判に立ちあがれなかった人びとも含めてみんなで『東電にはっきり謝罪させよう』と声をあげていきます」と話しました。