2020年3月7日(土)
新型コロナ 休校中 受け入れの学校は
私語・校庭遊び「ダメ」
教員ら改善努力も
安倍首相による一律休校の呼びかけに対し、学校で子どもを受け入れている政令市は16あることが、本紙の調査でわかりました。しかし、科学的根拠のない休校要請を受けて学校現場は大混乱。子どもたちは苦しんでいます。(染矢ゆう子、堤由紀子、松浦裕輝)
政令市 本紙調査
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休校により、学童保育は開所時間の延長を迫られたものの体制が整わず、入所していない子どもの居場所も必要になりました。そのため、小学校が児童を受け入れ、教職員が対応しています。
本紙の調べでは20の政令市のうち16市の小学校で、何らかの形で子どもを受け入れていました。残り4市のうち1市は、受け入れを検討中です。
学年を問わず「子どもが自宅で過ごすことが適当でないと考えられる場合」(さいたま市)、「やむを得ない特別な事情がある児童」(川崎市)を受け入れる市も。過ごし方は自習や読書が中心で、校庭や体育館の利用を禁止する市がある一方、「時間帯を区切って縄跳びや体を動かすこともしている」(新潟市)、「外での運動も」(北九州市)など、体を動かせるよう工夫している市もありました。
「行きたくない」
「たった1日で『行きたくない』って言う子どももいるんです」
こう話すのは、関東の政令市の小学校に1年生の息子を通わせる保護者です。
教員は環境を整えて、見守るだけ。子どもたちは机に座ってずっと自習。私語はダメ。トイレや水を飲みに行く時間も決められており、トイレでしゃべっても「ダメ!」。折り紙をしていたら「まずはプリントをしてから…」と怒られてばかり。ようやく漫画本の持ち込みはOKになりましたが、通ってくる子どもは減っていると言います。
保護者申し入れ
保護者らは、楽しく過ごせる受け入れ体制の工夫や、過ごし方の調査を教育委員会などに申し入れました。
関西のある政令市では、受け入れは午前8時半から午後2時半。それ以降は放課後事業です。子どもたちは図書室で、宿題プリントや自習課題をやったり、本を読んだり。校庭には出られず、弁当も図書室で食べます。
「教頭や教務主任に提案して、タブレットを図書室に設置させてもらいました。それぞれの教員が過ごし方を考えています」と、ある教員は話します。
“まるで囚人監視のよう”
前出の、関西の政令市の小学校では担任を中心に週2日、健康調査などの家庭連絡を入れています。しかし電話回線は少なく、6年生からかけ始めて1年生が終わったのが午後4時すぎ。電話のかけすぎで、夕方にはワイヤレス電話の子機の充電が切れ、1回線使えなくなるというトラブルに見舞われました。
同市の登校再開予定は16日。「遅れた学習はどう保障されるのか。新年度の準備はどうなるのか。そもそも本当に16日に再開されるのか。不安なことがいっぱいあります」
こうした教委からの一方的で理不尽な指示に、教員の怒りも収まりません。
「教育委員会は子どものことを何もわかっていない。私たちの自由にさせてほしい」
こう話すのは、関東の小学校に勤める教員です。子どもたちがやっているのは、休校中の宿題プリントや家から持ち込んだドリル、塾の宿題など。同市でもおしゃべりはダメ、立ち歩くのもダメ。子どもが「お絵かきしたいから裏紙ちょうだい」と教員に声をかけるのもNG。理由は「濃厚接触を避けるため」と。「感染した時の責任を問われたくない、という姿勢が見え見えです」と怒ります。
管理職自身が、「受け入れは私たちの仕事ではない」と消極的になっていることも、現場の対応に大きく影響していると言います。「私たち教員は子どもを楽しませるプロなのに、その心を殺してこんな対応を続けるなんて耐えられません。困っている子どもに手を差し伸べるのが、私たちの仕事。子どもたちのかけがえのない毎日を保障したいです」
子どもらしい生活を
政令市以外でも、受け入れによる矛盾が噴出。教員がその改善にとりくんでいます。
ある県庁所在地の小学校教員は「授業時間中はおしゃべりもせず、座っていなければなりません。教員はまるで“囚人”を監視しているかのようです」と話します。さらに納得がいかないのが、運動場や体育館の使用禁止。「感染症予防の観点や精神衛生上の観点からいえば、運動場で体を動かした方がよほどいいのに、科学的根拠がないことを平気で押し付けてくる。感染予防にも教育にもなっていません」
このままでは子どもの人権が守られないと、校長の許可を得て漫画本を職員室に配置。さらに教員同士で話し合い、「コロナウイルスってなんだろう」というプレゼンテーションを使った指導をすることも決まりました。
さらに、花壇の水やりと称して中庭を散歩したり、入学式準備の手伝いとして花飾りを作ったり。「子どもらしい生活を送る努力もしている」とも。「子どもの気持ちや不安も聞いてあげたいんです。大切なのは、みんなが自分の頭で考えること。これからが勝負です」
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