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2020年2月27日(木)

新型コロナ肺炎対策

日本共産党の対策本部長 小池書記局長に聞く

国の責任で抜本的な対策強化を

 政府は25日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を発表しました。日本共産党の新型コロナウイルス関連肺炎対策本部長の小池晃書記局長に、国の基本方針をどう見るかや、今後必要な対策について聞きました。


国の責任が示されていない

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(写真)小池晃書記局長

 ―政府の基本方針をどう見ますか。

 政府は基本方針で、国民や患者には、手洗い、せきエチケットを求め、「軽度の風邪症状」なら自宅で安静にするよう求めています。企業に対してはテレワークや時差出勤などを求め、学校には臨時休校などを求めています。さらに、医療機関に対しても感染拡大した場合の外来や入院の受け入れを準備せよと求めています。しかし、国が何をやるのか、果たすべき責任が示されていません。これが最大の問題です。

 国民や企業、医療機関などに協力を求めるのであれば、国は責任をもって十分な財政措置を取るべきです。

十分な財政投入で対策を

 ―共産党は当初から補正予算などの財政措置を求めていましたね。

 政府が打ち出している予備費103億円を含む総事業費153億円では全く足りません。しかし、安倍晋三首相は26日の衆院予算委員会での藤野保史議員の質問に「今の予算措置で対応は可能」と言い放ちました。驚くべきことです。

 アメリカでは大統領が約2800億円の予算措置を認めるよう議会に要求しました。シンガポール政府は約5000億円、香港政府も約4300億円をそれぞれ経済的支援を含む対策費として投入すると発表しています。

 財務省に確認したところ、現時点で今年度の予備費は2743億円も残っているということですから、これを全面的に活用すべきです。さらに、来年度予算案には1円も新型ウイルス対策費は入っていません。予算案を修正すべきですし、政府がやらないのであれば、野党として組み替えを提案し、十分な財政投入で対策を抜本的に強化することを強く求めていきます。

医療体制の強化がカギ

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 ―感染拡大に対処するカギはなんでしょうか。

 医療体制の強化が最大のカギを握ります。政府は、重症患者の入院治療のため、指定医療機関の感染症病床(約1800床)などを確保し、今後さらに一般医療機関にも患者の受け入れを要請していく方針です。その際には、病室だけでなく場合によっては病棟全部を確保するようなことも必要になってきます。病床確保のためには財政補てんがどうしても必要になります。

 外来診療については、現在、感染者(疑いを含む)は、「帰国者・接触者外来」を設置している医療機関のみで受け入れています。一般医療機関でも感染疑いのある患者の受診を可能にするのであれば、一般の患者とは別の入り口で受け入れ、別のスペースで診察する体制が確保されなければなりません。人員、スタッフも別に配置することになり、そのためにも財政支援が必要です。

 医療従事者自身の感染を防ぐとともに、院内感染を防止するためのマスク、防護服、目や顔を覆うシールドなども緊急に提供しなければなりません。患者を搬送する人員、車両などの調達も必要です。

 高齢者が利用する介護施設などは、感染が広がりやすく、持病がある人もたくさんいらっしゃるわけですから、ここにも感染を防ぐための資材を緊急に提供する必要があります。

 新型ウイルスの患者に対応する病院になり、一般の診療が制限された場合、地域医療が大変な困難に陥ります。周辺の医療機関も含め公的支援が必要です。

 感染症例などを取りまとめ、政府の責任で情報を速やかに公開して、現場医師に伝えていくことも重要です。

早急な検査体制の確立を

 ―日本では新型コロナウイルスの検査(PCR検査)が遅れているのではないかと指摘されています。

 わが国のPCR検査の実施件数の少なさは、マスコミでも取り上げられています。隣の韓国と比べても著しく少ない。感染を早期に発見すれば、拡大防止の手だてが取れますから、大学や民間検査機関などの力を総結集し、検査体制を急いで拡充することが必要です。

 医師が診察して必要があると医学的に判断したら検査できるようにするためにも、検査を保険適用することが急務です。

 また、インフルエンザのように、短時間で検査結果が出る簡易検査キットを早く開発し、供給することも求められます。

 繰り返しになりますが、医療機関の体制強化と検査体制の確立は国が「お願い」するだけでは進みません。抜本的な財政措置を民間医療機関や公的医療機関、大学病院などに対して準備段階から行っていく責任が問われています。

気軽に相談できる体制に

 ―軽度の場合、自宅で安静にと言われても不安ですね。

 軽症の患者が医療機関に集中してしまうことで重症患者の治療が遅れるなど、支障をきたすことがあってはなりません。しかし軽症の場合、自宅での安静療養を強調しすぎると具合が悪くても我慢してしまう人が出てくる恐れがあります。この間の報道によると検査が遅れたり、入院治療が遅れたりして、重症化したケースが出ています。

 気軽に相談できる体制の確立が急がれます。不安に応えて正確な情報提供をし、それぞれの事情に対応することと併せてやらなければならない。

 政府の基本方針は、相談センター、またはかかりつけ医に相談した上で受診を、となっていますが、日本医師会の2015年の調査でも、かかりつけ医がいると答えている人は全体の53・7%、40歳代では42%にとどまります。かかりつけ医のいない場合、相談センターに電話して、丁寧に個別の病状に応じて専門的なアドバイスがあればいいのですが、マニュアルだけに頼った対応になると、重症化の兆しを見逃す恐れもあります。

 保健所などの力も得て、専門的な知識を持つ人が相談に応じる万全の体制を早急につくる必要があります。多言語による在住外国人や外国人観光客への相談体制の強化も急がれます。

中小企業・雇用対策の推進

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(写真)クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が停泊する大黒ふ頭のゲートを出るバス=19日、横浜市鶴見区

 ―経済への影響も懸念されます。

 経済への影響は非常に深刻になっています。国内を含めた観光ツアーのキャンセルや、中国だけでなく、海外企業との取引が停止されたり、大規模なイベントが中止・延期となったり、行楽地の施設が休止になるなどしています。飲食・観光・運輸などの分野で、中小・零細企業を中心に大きな損失が発生し、経営不振が引き起こされています。

 政府は、13日に発表した「緊急対応策」で、日本政策金融公庫の緊急貸し付け・保証枠を確保し、公庫等による貸し付けや信用保証協会によるセーフティーネット補償を行う方針です。この支援対象を大幅に拡大するとともに、とくに資金繰りが苦しくなっている中小零細業者の“つなぎ融資”を緊急に行うことが大事です。

 感染症の影響による事業縮小で仕事を休んだ人に、休業期間中の収入を保障するため、売り上げが減少している事業主に対する国の支援策として、雇用調整助成金に特例が設けられています。今は「日本・中国間の人の往来が急減により影響を受ける事業主」に対象が限定されていますが、もっと対象を拡大する必要があります。

クルーズ船対応再検証を

 ―今後も水際対策は必要でしょうか。

 対策の重点は国内での感染拡大防止ですが、入国時の検疫は引き続き重要です。とくに、地方の空港・港湾における検疫体制の強化が求められます。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応については、専門家への協力をあおぎながら引き続き万全を期すことが求められます。

 同船に隔離していた乗客を下船させたことは人道上必要だったと思いますが、下船後、「感染の危険はない」として公共交通機関で帰宅させた対応には重大な問題があると思います。このような集団感染の際に、万全を期すためにも、全面的な再検証をしなければなりません。


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