2020年2月14日(金)
新型肺炎 クルーズ船 下船対応早く
地域医療機能推進機構理事長 尾身茂さん会見
予防・倫理上も問題
感染が広がる新型コロナウイルスをめぐって厚生労働省が所管する独立行政法人「地域医療機能推進機構」の尾身茂理事長は13日、国がとるべき対策について日本記者クラブで会見しました。このなかで尾身氏は感染者が相次いでいるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」は船が感染防御を目的とした構造となっておらず、船内に乗客乗員をとどめておくことは「感染対策上も、倫理上にも問題がある」と述べました。(岡素晴)
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尾身氏は、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した当時、世界保健機関(WHO)の西太平洋地域事務局長として対応にあたった経験があります。
クルーズ船の乗客らについて、船が感染防御目的の構造ではなく、隔離の長期化に伴い心身ともに強度のストレスを強いられていることに言及しました。船内で二次感染も疑われるなど船内環境の悪化が懸念される中、「このまま船内にとどめておくことは感染対策上も、倫理的にも問題がある」と指摘。ウイルスを検出するPCR検査をした上で、持病が悪化しているなどの乗客らを優先的に下船させていく必要性があると述べました。
また、国は「下船後の受け入れ先(安全な宿泊先)を確保し、感染防御の態勢を早急に準備しなければならない」と強調しました。
感染拡大の状況について尾身氏は、すでに「初期」から「早期」に移ったとみなし、対策を取るべきだと説明。これまで中国の武漢、湖北省の渡航歴などがある人に限って検査してきた対応を見直し、地域の医療現場で肺炎の症状が出ている例を早期に診断、隔離、治療できる態勢へ移行しなければならないと訴えました。
今後、「感染拡大期」に状況が進む可能性も想定し、一般病院でも診療できる態勢を準備する必要性も語りました。
外国籍の乗客らの下船について記者から問われて、尾身氏は「クルーズ内は感染密度が濃くなり、ウイルスが広がる絶好の場所になりつつある。公衆衛生の観点から個人的には、日本人も外国人も下船を認めるべきだと思う」と回答。外国人の入国を規制する法律上の問題に言及し、「日本は国際社会のリーダーシップを担う立場から度量を示してほしい」と話しました。
下船を早くできなかったのか、国の対応の是非を問う質問に対しては「早くしたほうがよかったが、下船してからの受け入れ先を準備するのは、それなりに時間がかかるだろう」と答えました。