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2020年2月6日(木)

主張

米一般教書演説

対立と憎悪あおる危険あらわ

 「トランプ流」の対立と憎悪をあおる政治の危険が改めてあらわとなりました。トランプ米大統領が4日に行った一般教書演説は、11月の大統領選をにらんで、自身の支持層には“成果”を誇示する一方、野党や移民、外国人を激しく攻撃するという「トランプ流米国第一」が露骨に表れました。「もう4年」と連呼する与党・共和党議員たちに対し、野党・民主党のペロシ下院議長が、トランプ氏から受け取った教書を壇上で破り捨てるという異例の展開は、アメリカ政治の抱える深刻さをまざまざとみせつけています。

覇権に固執し支持層優先

 「インクルーシブな(排除のない)社会」をめざすと強調したのとは裏腹に、トランプ氏は銃規制反対、環境保護措置の緩和、南部国境での壁建設など共和党支持層が好み、野党側が厳しく批判する政策を列挙し、推進すると宣言しました。深刻な社会格差など存在しないかのように米経済の現状を手放しで自画自賛もしました。

 その一方で、無保険者の解消などをめざして医療保険の公的拡充を求める世論と運動を「社会主義」と非難し、多面的できめ細かな取り組みが求められる移民問題では、治安悪化への恐怖心ばかりを訴えて分断をあおる主張に終始しました。

 最後は、共和党政権が推進したことも忘れたかのように、イラク戦争で犠牲となった兵士たちへの哀悼で、愛国心を賛美して、国民に“結束”を求めました。

 対外政策の面で、あからさまな覇権主義・介入主義の姿勢が際立ったことも重大です。

 自らが命令したイラン革命防衛隊司令官への米軍による殺害行為を、米国人を殺した「モンスター」への報復だと正当化しました。国連憲章に違反した無法な先制攻撃という国際秩序への重大な侵犯に対し、何の痛みも感じていないことを示しています。地域情勢の悪化に対する国際社会の懸念の声に耳を貸そうとしていません。

 ベネズエラのグアイド国会議長をわざわざ議場に招いて、「社会主義は国を破壊し、自由は結束させる」と述べたことは、ベネズエラの事態を米国内の政治変革の運動への攻撃に利用しようとするものです。トランプ政権のベネズエラ問題での思惑を示しています。

 同盟国への軍事的な負担増を改めて自身の基本政策として宣言したことも、日本などへの一層の負担増要求として見過ごすことはできません。

 軍事的覇権主義と大企業優先のグローバル化を推進してきた米国内で、強まっている国民の怒りと不満の行方が、独善的に自国利益を追求する「トランプ流米国第一」の継続となるのか、新しい選択肢に向かうのか、のせめぎあいが激しさを増しています。

米国の有権者の模索

 アメリカの現状は、分断と対立の政治が何をもたらすかを鮮明にしています。

 3日から野党・民主党の大統領予備選・党員集会が始まり、初戦のアイオワ州では、内政・外交で大きな転換を求める「民主的社会主義者」のサンダース上院議員と他の中道候補が互角のたたかいとなっています。トランプ政治、グローバル資本主義の危機からの転換に向けた有権者の模索として注目されます。


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