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2020年2月5日(水)

主張

巨大IT課税

実効ある国際ルールづくりを

 国境を越えて巨額の利益をあげる巨大IT(情報技術)企業などへの課税をめぐる国際的なルールづくりが重要な局面を迎えています。1月31日、経済協力開発機構(OECD)の案に日本を含む137カ国・地域が大筋合意しました。年内に最終合意を目指しますが、巨大IT企業を多く抱える米国が骨抜きを狙います。実効ある国際課税制度の確立が必要です。

税逃れ対策に向けた試み

 経済のグローバル化、デジタル化に伴い、現行の課税ルールが実態に合わなくなっています。多国籍企業が利益を低税率の国・地域(タックスヘイブン)に移し、本来払うべき税金を逃れることが横行しています。インターネットで事業を展開する巨大IT企業「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は、支店や工場など「恒久的施設」を持たないとの理由で、事業を行って利益を上げた国での課税を免れてきました。

 多国籍企業の税逃れは、社会保障など暮らしに欠かせない施策の財源を損ない、国民の負担増を招いています。税の抜け道をふさぐ公正な国際課税は格差是正のために待ったなしの課題です。

 国際世論の高まりを受けて、主要20カ国・地域(G20)とOECDは2013年から「税源浸食と利益移転」(BEPS)プロジェクトに取り組みました。続いて16年には「BEPS包括的枠組み」と題するプロジェクトを開始しました。今回大筋合意されたのはその議論を踏まえた文書です。

 新ルールは、複数の国で活動する多国籍企業をグローバルに活動する単一の企業とみなし、企業グループの総利益のうち、一定の利益を超えた分(超過利益)の一部を売上高に基づいて各国に配分します。配分される国の中には巨大IT企業が「恒久的施設」を置かない国も含まれます。各国は配分された利益に対し、自国の税率で課税します。法人税の最低税率も定めます。新ルールの対象となる企業は巨大ITだけでなく、広く「消費者向けビジネス」です。

 OECD案は税逃れ対策の新しい試みです。課税対象となる利益が多国籍企業の総利益の一部であることや、すべての多国籍企業が対象になっていないことに対し、公正な課税を求める市民団体が不十分さを指摘しています。また、実効ある制度づくりには、超過利益の水準や、課税対象となる多国籍企業の規模をどう設定するかなど細目を詰める必要があります。11月にサウジアラビアのリヤドで開かれるG20首脳会議での最終合意を目指しています。

骨抜き図るトランプ政権

 米国を中心とする多国籍企業は新たな国際課税に抵抗しています。経団連も昨年3月、OECD事務局が進める改革に対して「大掛かりに過ぎる内容も含まれている」とする意見書を提出しました。大筋合意したOECD案に対し、米国は新しいルールに従って納税するかどうかの選択を各企業に委ねるよう提案しています。制度を骨抜きにし、多国籍企業の税逃れを野放しにする逆流です。

 すでに英国、フランスなど各国が国際合意を待つことなく、独自にデジタル課税の導入、実施に動いています。多国籍企業に公正な課税を求めるルールづくりはいまや世界の流れです。


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