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2020年2月4日(火)

主張

3・1ビキニデー

被爆75年の世論広げる契機に

 1954年3月1日、南太平洋・ビキニ環礁でアメリカが強行した水爆実験は、多くの漁船や周辺島民に甚大な被害をもたらしました。今年で66年となる「3・1ビキニデー」は、海外代表も招いて全国集会などが行われます(28日~3月1日、静岡市、焼津市)。

核実験被害者の苦しみ

 広島・長崎の被爆75年の今年は、5年に1度の核不拡散条約(NPT)再検討会議が4月から国連本部で開かれます。世界の反核運動は、核固執勢力を追い詰める世論を結集しようと、ニューヨークで原水爆禁止世界大会(「世界大会―核兵器廃絶、気候の危機の阻止と反転、社会的経済的正義のために」)を開催します。2016年から始まった「ヒバクシャ国際署名」の最終集約も今秋の国連総会です。今年のビキニデー集会は、こうした取り組みへの跳躍台となることが期待されています。

 ビキニ被災は、広島・長崎の被爆から間もない時代です。多くの国民に衝撃を与え、原水爆禁止の署名は有権者の半数近くの3200万人に達しました。これが翌年の第1回原水爆禁止世界大会(1955年)につながりました。この国民的運動の原点を受け継ぐことが、一層重要になっています。

 2017年に採択された核兵器禁止条約は、「核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)および核実験の被害者にもたらされた容認しがたい苦難と損害に留意」(前文)し、被害者の援助と汚染された環境の回復を義務付けています(第6条)。世界の核実験被害者は核兵器開発の犠牲者です。

 生きのびた人も、後遺症や汚染などに苦しめられています。この人々は、広島と長崎の被爆者とともに、核兵器の非人道性を示す生き証人です。核実験被害にも目を向け、その救済をめざすことは、「核兵器のない世界」へ前進するためにも不可欠です。

 ビキニ被災では、静岡県のマグロ漁船の第五福竜丸が被ばくし、無線長の久保山愛吉氏が急死しました。その後の調査で、周辺で操業した推計1400隻もの漁船が被ばくしたことが判明しました。被災した船員は全国に広がっています。ところが、日本政府は長年、この実態を隠してきました。市民団体、学者、被災者の追及で真相が明らかになると、「健康に影響する被ばくはなかった」と主張し、責任回避に終始しました。政府は当時、アメリカのわずかな「見舞金」によって調査を打ち切り、問題の幕引きを図りました。核戦略への批判が高まることを恐れたアメリカの意を受けたものです。

 ビキニ被災者らは、国の責任を追及し、国家賠償請求訴訟をたたかってきました。昨年の高松高裁の二審判決は、賠償は認めなかったものの、「原爆被害者との共通性」を認め、行政と立法に救済の「検討」を促しました。政府は一刻も早く、ビキニ被災の全貌を明らかにし、高齢化する被災者の救援のための措置をとるべきです。

禁止条約への参加を

 安倍晋三政権は、アメリカの「核の傘」を理由に、核兵器禁止条約に反対しています。戦争被爆とともに、核実験の被害までも体験した国として、あるまじき姿勢です。禁止条約に署名、批准をしないのなら、それをできる政府をつくる―。ビキニデーを、その世論を広げる契機にしていきましょう。


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