2020年2月2日(日)
きょうの潮流
息子が進学した中学校は、社会の分断を映したような事件の連続。歴然とした貧富の差や丸出しの人種差別、ジェンダー。渦巻く多様性のなかで親子はともに悩み考える。生身の子どもはすべてにぶち当たる―▼英国在住の保育士で物書きのブレイディみかこさんが著した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』はそんな日常を描きます。日本人の母とアイルランド人の父をもつわが子は「元・底辺中学校」に入学。そこは英国の今をリアルに反映した世界でした▼学校生活にみられる格差、社会的な弱者や移民同士の対立、緊縮財政のもとで教育よりも生徒の衣食住に気を配らなければならない先生たち…。それは国が二分され、苦悩する姿そのものです▼その英国が、EU(欧州連合)から離脱しました。第2次世界大戦後に統合の歩みが始まって以来、加盟国が減るのは初めて。平和と共栄をめざしてきたEUにとっても今後のあり方を問われる転機になりました▼離脱が支持を集めた背景にはEUが求める緊縮財政への反発や拡大する経済格差、移民に対する反感などが指摘されています。しかし、そうした国民の不満や怒りが離脱によって解消されるのか。深まった分断の溝をどう埋めるのか。「真の再生と変革の瞬間」などと喜ぶジョンソン政権の課題は山積しています▼ブレイディさんの本には難しい状況に直面しながら乗り越えていく子どもたちのたくましさも。おとなが想像もつかない未来を感じている彼らは希望だと。