2020年1月25日(土)
先端技術で「個別最適化」
今後の学校教育 画一化の恐れ
中教審総会
24日に開かれた中央教育審議会(文部科学相の諮問機関、会長=渡辺光一郎第一生命ホールディングス会長)の総会に、これからの小・中・高校などの教育の在り方に関する「論点取りまとめ」が報告されました。先端技術の活用で一人ひとりの子どもに「個別最適化された学び」を推進するなど、学校教育を大きく変える内容を盛り込んでいます。
「論点取りまとめ」は同審議会の初等中等教育分科会が提出。今後、これに沿った審議が行われます。
「個別最適化された学び」は、情報通信技術(ICT)や先端技術を使い、一人ひとりの子どもの学習傾向やスポーツ・文化活動などのデータを分析して、それぞれの子どもに「最適化」された学習内容を提供するというもの。2018年6月に経済産業省の「『未来の教室』とEdTech研究会」の提言や、文科省の報告書「Society5・0に向けた人材育成」で提起されました。公教育への企業の参入をいっそう進め、集団的な学びがおろそかにされ、教育の画一化につながる恐れがあります。
「論点取りまとめ」は「個別最適化された学び」のために学習用コンピューターの「児童生徒1人1台環境」を実現するよう求めています。すでに文科省は昨年12月、「個別最適化」のためとしてコンピューターを1人1台整備することを中心とする「GIGAスクール構想」を打ち出し、19年度補正予算案に2318億円が計上されています。
「論点取りまとめ」は22年度をめどに小学校高学年から本格的な教科担任制を導入することも求めました。
学び平板化 格差広げる
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児美川孝一郎・法政大学教授(教育学)の話 教育現場のICT環境の整備自体は重要ですし、個々の子どもに合った学習をきちんと保障することも大切です。しかし、教科の学習はすべて、パソコンやタブレットを使って先端技術で「個別最適化」すればいいというのは大問題です。
集団での学びでは「型」からはずれたような発想をする子がいて、そこからみんなが学ぶことで、考えが深まるということがあります。「個別最適化」で効率よく学ぶだけでは学ぶ過程が平板になり、深みがありません。
豊かな学びを実現するには、教師の充実した指導やそのための条件整備が必要ですが、「論点取りまとめ」にはそうした観点がありません。
また、学びへのモチベーション(意欲)をどう引き出すかという視点もありません。やる気のある子はどんどん進むけれど、そうでない子はいくら「あなたに合った学習だ」と言われてもやる気にはならない。できる子だけがどんどん進み、格差が広がります。
個別に効率的に学び、試験問題ができればいいというわけではありません。学ぶことの意味、公教育の意義を国民的に議論していくことが必要になっていると思います。