2020年1月25日(土)
山下副委員長の代表質問
参院本会議
日本共産党の山下芳生副委員長が24日の参院本会議で行った安倍晋三首相に対する代表質問は次の通りです。
「桜を見る会」――問われているのは安倍首相が行った私物化
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まず、「桜を見る会」について聞きます。
どの世論調査でも7、8割の国民が、総理の説明に「納得できない」と答えています。ところが、総理は施政方針演説で、この問題に一言も触れませんでした。あまりに無自覚、無反省といわねばなりません。
以下、端的にうかがいます。
一つ。総理は、「長年の慣行の中で」「招待者の基準が曖昧であった結果として招待者の数がふくれあがってしまった」との答弁をくり返していますが、問われているのは「長年の慣行」ではありません。第2次安倍政権で総理自身が行った「桜を見る会」の私物化です。その認識はないのですか。
二つ。下関市の安倍晋三事務所が、「桜を見る会」の参加者を募り、安倍事務所主催のツアー旅行に利用した、総理はこのことを認めますか。これが「桜を見る会」の適切な招待だという認識ですか。
三つ。総理は昨日、安倍事務所が推薦したもので、招待されなかった例もあったと答弁しましたが、その根拠は何ですか。
四つ。2018年には、自民党の都道府県会議員研修会の参加者に対し、希望者には翌日開催される「桜を見る会」の招待状を渡していたとの報道があります。これは事実ですか。内閣府が提出した資料でも、2018年は「総理等」の招待者が最も多い9494人に達しています。これは、同年行われた総裁選挙で地方票を獲得するために、自民党地方議員を多数招待したからではないですか。
以上、明確な答弁を求めます。
カジノ汚職――疑惑の解明と実施中止を求める
つぎに、カジノ汚職について質問します。
安倍総理が、「成長戦略の目玉になる」と推進してきたカジノ事業をめぐり、現職国会議員が、中国のカジノ企業からの収賄容疑で逮捕されるという重大事件が起こりました。総理、重く受けとめるというのなら、このままカジノを実施するわけにはいかないのではありませんか。
もともとカジノは、刑法で禁じられた賭博であるにもかかわらず、国民多数の反対を押し切って解禁されました。逮捕された自民党の秋元司議員は、「カジノ推進法」を強行採決したときの衆議院内閣委員長、「カジノ実施法」を提案したときの内閣府IR担当副大臣と、カジノ解禁に道をつけるど真ん中を歩いてきた人物です。その人物に、贈賄側のカジノ企業からどのような要請があり、カジノ解禁の制度づくりにどのような影響があったのか、カジノ「推進法」「実施法」の策定過程を、政府として検証すべきと考えるがどうか。
カジノ解禁をめぐる政治家への資金提供は中国企業にとどまりません。2014年から3年間、アメリカの大手カジノ企業・シーザース・エンターテインメントから、「カジノ推進法」の提案者だった自民党など15人の議員にパーティー券購入の形で資金が渡っていたと報じられ、西村康稔(やすとし)経済再生担当大臣は、18年7月、参議院内閣委員会でその事実を認めました。カジノ面積の上限規制が、米国カジノ企業の要求により緩和された経緯もあります。カジノマネーが日本の政界を汚染し、カジノ企業に都合のよい制度となったのではないかとの疑惑はいよいよ深まりました。
総理、疑惑の全容解明とともに、カジノの実施は中止すべきです。野党は共同して「カジノ廃止法案」を提出しましたが、この法案にどういう態度をとるつもりか、答弁を求めます。
消費税増税――「弱者から吸い上げ、大企業・富裕層を潤す」のが正体、5%への減税を求める
歴代最長となった安倍政権は、どの政権もやったことがない2度にわたる消費税増税を強行しました。しかし、消費税導入後の32年間、消費税収は国・地方合わせて424兆円にも達しますが、同じ時期に法人3税の税収は306兆円減り、所得税・住民税の税収も280兆円減りました。消費税の目的は、「社会保障のため」でも、「財政再建のため」でもない。「弱者から吸い上げ、大企業や富裕層を潤す」――これが、すっかり明らかになりました。総理、これこそが消費税の正体ではありませんか。
政府は今回の補正予算で、経済対策のために2・2兆円、景気悪化による税収不足の穴埋めに2・2兆円、あわせて4・4兆円もの国債を追加発行しようとしています。消費税10%への増税分がすべて消し飛んでしまう規模です。消費税増税で景気を悪化させては、そのたびに経済対策を組む――この悪循環から、いいかげんに抜け出すべきではありませんか。答弁を求めます。
日本共産党は、格差を拡大し、景気悪化を招いた消費税を5%に減税すること、社会保障と暮らし応援の財源は、大企業、富裕層に応分の負担を求めてつくることを提案していますが、総理の見解を求めます。
フリーランス――究極の使い捨て雇用の拡大ではなく、「正社員が当たり前」のルールつくれ
つぎに、雇用について聞きます。
総理は施政方針演説で、「多様で柔軟な働き方を可能にする」と述べました。かつて経済産業大臣は「フリーランサーのような…契約にとらわれない、柔軟な働き方は、働き方改革の鍵となる」と発言しています(世耕弘成経産相、16年10月)。
内閣府の調査では、「自営業主」の形で働くフリーランスは、すでに300万人(副業を含める)にのぼり、全就業者の5%になっています。この調査では、「特定の発注者に依存する雇用的自営業者」が「増加傾向」にあり、「最近の労働市場の変化の特徴の一つ」だとしています。「特定の企業に依存」しながら、「雇用関係がない」ために、労働者としての権利はまったく保障されない。最低賃金も適用されず、労働保険もなく、仕事中の事故も「自己責任」。「契約打ち切り」による解雇も企業の自由勝手。まさに労働者の権利ゼロ、企業にとっては雇用責任が一切問われない、究極の「使い捨て」労働が、日本でもアマゾンやウーバーイーツの宅配代行業務などで広がっています。
総理は、「非正規という言葉をこの国から一掃する」と言いますが、安倍政権がやろうとしているのは、実態は労働者でありながら、雇用関係がない自営業者として働かせる――「非正規雇用」ですらない労働者を増やすことなのではありませんか。
人間らしい労働――ディーセントワークの実現は、ILO(国際労働機関)はじめ世界の大きな流れです。「働き方改革」といいながら、それに真っ向から反する働かせ方を増やすことなどあってはなりません。
日本共産党は、中小企業の支援を強化しながら、最低賃金をただちに時給1000円、すみやかに1500円に引き上げること、労働者派遣法を抜本改正し、雇用は正社員が当たり前のルールをつくること、「残業代ゼロ制度」を廃止し、長時間労働を是正することを提案していますが、総理の見解を求めます。
対米外交――中東派兵やめ、米軍駐留経費の負担増額を拒否し、辺野古新基地断念を
つぎに、対米関係について聞きます。
トランプ大統領の指示で行われた、米軍によるイラン司令官殺害をきっかけに、中東の緊張が激化し、軍事的衝突から戦争に発展する危険が続いています。
総理は衆議院で、わが党の志位委員長から、米国による国連憲章に違反した無法な先制攻撃を是とするのか、非とするのかと問われましたが、答弁を避けました。
あからさまな国連憲章違反を批判すらできないとは、対米従属外交極まるといわなければなりません。緊張激化につながる中東沖への自衛隊派兵はやめるべきです。
対米外交にかかわって2点聞きます。
第一に、在日米軍駐留経費の問題です。
トランプ大統領は12月3日、「シンゾウには『君たちはわれわれを助けないといけない。われわれは多くのカネを払っているんだ。君たちは裕福な国なんだろう』と伝えた」と、米軍駐留経費の負担増を安倍総理に要求したことを明らかにしました。総理、これは事実ですか。いったい何を言われ、どう答えたのですか。
そもそも、日米地位協定は「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」は、「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」(第24条1項)と明記しています。にもかかわらず、「思いやり」などといって、在日米軍駐留経費を負担することは、安保条約・日米地位協定にさえ反するものです。「思いやり予算」、米軍再編関連経費、SACO(日米特別行動委員会)経費を合わせた日本が負担する米軍駐留経費の総額は、1978年以降の43年間で実に10兆円にのぼり、他のすべての同盟国の負担額の合計を上回っています。きわめて異常だと言わねばなりません。総理、トランプ大統領からの米軍経費負担の不当な増額要求は、はっきり拒否すべきではありませんか。
第二は、沖縄での米軍新基地建設の問題です。
政府は昨年末、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設について、これまでの計画を見直し、完成までの期間を約12年、総工費を約9300億円とする試算を示しました。辺野古東側にある大浦湾の埋め立て予定海域に超軟弱地盤が広がり、当初の計画になかった大規模な地盤改良工事が必要になったためです。工期も費用も大幅に膨張することになりますが、これで済む保証はまったくありません。
地盤改良のための設計変更には、玉城デニー沖縄県知事の承認が必要ですが、知事は絶対に新基地をつくらせないと明言しています。総理、やみくもに土砂を投入しても、新基地を完成させる展望などないのではありませんか。
沖縄県民の圧倒的な民意を踏みにじり、新基地建設を強行することは、政治的にも技術的にも完全に行き詰まっています。
政府は、普天間基地の「一日も早い返還」という口実で、新基地建設を強行してきましたが、日米両政府が1996年に普天間基地の返還を合意してすでに四半世紀になります。返還が実現しないのは、代替の基地をあくまで沖縄県内に求め、普天間と辺野古をリンクさせてきたからにほかなりません。今度の見直しで、普天間返還はさらに大幅にずれ込みます。「世界一危険」といわれる基地を、いつまで県民に押しつけるのですか。
総理、普天間基地は即時閉鎖・撤去し、辺野古基地建設は断念すべきです。答弁を求めます。
対中外交――領海侵犯の激増・常態化、香港での人権侵害に抗議もしないのか
つぎに、対中外交にかかわる二つの問題について聞きます。
一つは、東シナ海における中国の覇権主義的な行動がエスカレートしている問題です。2019年の1年間で、中国公船による尖閣諸島周辺の領海侵犯を含む接続水域への入域は、のべ隻数で1097隻を数え、前年の1・8倍、過去最多に達しました。
2018年に、日中両国関係について、「正常な発展の軌道に戻すことができた」と喧伝(けんでん)しながら、その翌年の2019年に、領海侵犯などを激増・常態化させることは、きわめて不誠実な態度といわなければなりません。
中国側にどんな言い分があろうとも、日本が実効支配している地域に対して、力によって現状変更を迫る行動を常態化させ、実効支配を弱め、自国領と認めさせようという行動は、国連憲章などが義務づけた紛争の平和的解決の諸原則に反する覇権主義的な行動だといわなければなりません。日本共産党は、中国のこうした行動に強く抗議し、その是正を求めるものであります。
いま一つは、香港における人権侵害の深刻化です。自由と民主主義を求める香港市民の活動に対する香港警察による弾圧が強まるもとで、日本共産党は、昨年11月、弾圧の即時中止を求める「声明」を発表し、中国政府に伝達しました。
この問題について、「香港警察の暴力もひどいが、デモ参加者の暴力もひどい。どっちもどっちだ」という議論がありますが、わが党はそうした立場にたちません。わが党も、デモ参加者が暴力を自制し、平和的な方法で意思を表明することが大切だと主張してきました。同時に、殺傷性の高い銃器を使用した香港警察の弾圧はそれとは次元を異にするものであり、事態の推移と事実に照らすなら、深刻な事態を招いた責任が、香港政府および中国政府の側にあることは明瞭です。とくに弾圧が、中国の最高指導部の承認と指示のもとに行われていることは、きわめて重大と言わなければなりません。
中国は、この問題についての国際的な批判を、「内政干渉」として一顧だにしない姿勢をとっています。しかし、今日の世界においては、さまざまな国際的な人権保障の基準がつくられ、人権を擁護し発展させることは国際的な課題となっています。
そこで聞きます。総理は、昨年12月に訪中し、習近平国家主席、李克強国務院総理とそれぞれ首脳会談を行いました。その際、尖閣と香港の二つの問題について、先方にどのような意見を述べたのですか。外務省の会談概要をみると、総理は、ただ「憂慮する」と述べただけで、抗議の表明も、是正や中止を求めることもしていません。重大な領海侵犯、重大な人権侵害が行われているのに、抗議一つしない情けない外交でいいのですか。しかとお答えください。
気候変動――国連の要請にこたえ、温室効果ガス「実質ゼロ」に取り組め
最後に、地球規模の気候変動について聞きます。
猛威を振るう風水害、熱波、多発する山火事など、国連のグテレス事務総長が「気候危機」と表明しているように、一刻も早い対応が迫られる状況に、人類は直面しています。
ところが、昨年12月のCOP25(国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議)で、日本政府は、地球温暖化対策に前向きといえない国に対してNGOが贈る「化石賞」を2度も受賞するという不名誉な事態となりました。
そこで聞きます。
第一に、グテレス事務総長が、石炭火力発電所について2020年以降の新規建設中止を訴えるなど、石炭火力からの脱却は世界の流れとなっています。ところが、日本は、国内で建設中、計画中の石炭火力が22カ所もあります。向こう30年~40年も二酸化炭素を出しつづける施設を、新たに多数つくろうというのです。
国連環境計画(UNEP)は、日本に、石炭火力発電所の建設をやめ、既存の火力発電所を停止する日程表をつくるよう勧告しています。
総理は、こうした訴えや勧告に正面から向き合う考えはないのですか。石炭火力の建設中止を決断しないのですか。お答えください。
安倍政権が、石炭火力発電所の輸出を「成長戦略」と位置付けて推進していることも、世界で大問題となっています。地球環境を壊し、世界の持続可能な発展を破壊する「成長戦略」などあり得ません。石炭火力の輸出は中止すべきではありませんか。
第二に、2050年までに温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にするための戦略を、今年中にまとめるとしている国は75カ国にのぼります。ところが日本は「2050年度までに80%削減」のままとなっています。これでは環境後進国といわれても仕方ありません。
総理、国連の要請にこたえ、2050年までに「実質ゼロ」をめざす、その実現のために2030年削減目標を引き上げる――こうした「ゼロ」戦略の立案に直ちに取り組むべきではありませんか。答弁を求めます。
世界の流れにたち、国民に希望がわいてくる新しい政治を、市民と野党の共闘できりひらく決意を述べて質問を終わります。