2020年1月22日(水)
原爆症 最高裁で弁論
原告「経過観察は医療行為」
3訴訟同時に審理
原爆症の認定申請を却下された白内障などを患う被爆者が認定を求めている名古屋、広島、福岡高裁の3訴訟の上告審弁論が21日、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)で開かれました。経過観察のみが行われている場合でも、原爆症と認定すべきかが争点で、判決期日は2月25日に指定されました。二審の判断は割れており、最高裁が統一判断を示すとみられます。
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被爆者援護法にもとづく原爆症の認定は、(1)病気が原爆の放射線に起因する(2)現に医療を要する状態(要医療性)にある―ことが要件とされています。
広島と福岡の被爆者は白内障、名古屋の被爆者は慢性甲状腺炎を患い、経過観察を受けていました。
3訴訟とも、広島、長崎の原爆による被爆者援護法に基づき原爆症認定申請を行いましたが、広島、名古屋高裁は原爆症と認め、福岡高裁は被爆者が敗訴したため、上告受理を申し立てていました。
弁論で国側は、原告は白内障や慢性甲状腺炎と診断されているが、症状を改善するための積極的な治療はされていないと指摘。「経過観察だけでは、要医療性の要件を満たさない」と主張しました。
原告側は「経過観察が重要な医療行為であることは明らかだ」と訴え、要医療性が認められると反論しました。
原告の高井ツタヱさん(83、名古屋)と内藤淑子(としこ)さん(75、広島)が意見陳述し、被爆体験として原因不明の体調不良に苦しんだことや、被爆の影響が子や孫にあるのではないかとの不安を抱えていることなどを語り、「被爆者を救済する判断を下してください」と訴えました。
司法は決意を
弁論を終えた被爆者と弁護団は衆院第1議員会館で会見しました。
高井さんは、「戦争によって被爆したので、原爆症という病気も治してもらいたい。長生きして、被爆の実態を語り、核兵器廃絶を広げていきたいし、戦争のない世界にするためにがんばっていきたい」と語りました。
内藤さんは、「原爆症と認定してもらえるように願っています」と語り、ふたたび被爆者をつくらないために支援を呼びかけました。
日本原水爆被害者団体協議会の木戸季市(すえいち)事務局長は、「原爆投下から11年間、被爆者は日本政府からなんの救済もされず、見捨てられた」と述べ、「司法が再び、被爆者をつくらない、と決意する記念すべき日になれば」と期待を語りました。
最高裁に提出した被爆者の手紙6人分を被爆者が代読し紹介。弁護士らは、「この裁判は3人の原告の裁判ではなく、多くの被爆者への判決になる」と訴えました。
原爆症認定訴訟・愛知弁護団の樽井直樹弁護士は、「最高裁は統一した判断を下すものと思われます。原爆症認定の最高裁判決は、松谷訴訟以来2例目。被爆者が最高裁で直接訴えたのは初めてです」と語りました。