2020年1月21日(火)
安倍首相演説 際立つモラル破壊
政権に終止符早く
20日に始まった通常国会での安倍晋三首相の施政方針演説。「新しい時代の日本を創る」と呼び掛けたものの、自らに直結する疑惑の数々に一切答えず、自らの失政を取り繕う、偽りとゴマカシの姿勢を際立たせました。こんな政権には、一日も早く終止符を打つことが必要です。
だんまり 桜・カジノ汚職
説明責任どこへ
「桜を見る会」での国政私物化、カジノ利権をめぐる自民党現職議員の逮捕、公職選挙法違反の疑惑で2閣僚辞任―。安倍首相は、国政を揺るがしているこれら大問題について施政方針でただの一言も触れませんでした。
税金を使った公的行事「桜を見る会」に、安倍首相はじめ自民党議員らが自らの選挙区の後援会関係者を招待したことが明らかになり政治買収の疑惑が指摘されています。招待者に安倍首相や妻の昭恵氏の事実上の推薦「枠」が判明し、反社会勢力や悪徳マルチ企業関係者が招待されたのではないかとの疑惑に国民の批判が沸き起こっています。
公選法違反疑惑で辞任した菅原一秀前経済産業相、河井克行前法相は、これまで説明責任を一切果たしていません。
国内のカジノの制度設計に深く関与してきた自民党衆院議員(離党)の秋元司容疑者の逮捕(2019年12月25日)では、国内のカジノ解禁を「成長戦略の目玉」として進めてきた安倍首相の責任が問われています。
ところが、安倍首相は、「桜を見る会」の私物化疑惑から逃げ続け、2閣僚の辞任の理由を不問に付し事実解明から背を向けながら、カジノ利権をめぐる疑惑解明も一切なし。謝罪や反省を口にすることはありませんでした。
そればかりか、施政方針演説では、カジノを推進するための「管理委員会」を発足させ「複合観光施設の整備に取り組む」と述べ、カジノ推進に固執しています。
疑惑にふたをし、追及から逃れようとする安倍首相の姿勢は、自民・安倍政権のモラルハザード(倫理観の喪失)の深刻化を表しています。
おしつけ 消費税・社会保障
国民生活に痛み
安倍首相は施政方針で「日本経済は、この7年間で13%成長し、来年度予算の税収は過去最高となりました」と自らの経済政策を誇りました。
しかし、国民の暮らしは、昨年10月からの消費税増税で痛めつけられているのが実態です。家計消費は2カ月連続マイナス、日銀短観は6年9カ月ぶりに悪化。中小業者は、消費低迷や大手との値引き競争、事務負担増加などの打撃を受けています。
安倍首相は施政方針で、この消費税増税については一言も触れずじまい。一方で26兆円の経済対策を講じると述べましたが、消費税増税で景気悪化させながら「景気対策」と称して「ばらまき」し、「借金」を増やすのは悪循環の極みです。
安倍政権は「社会保障」を理由に7年で消費税率を5%から10%に引き上げて13兆円もの負担増を国民に押し付けながら、社会保障は連続改悪。さらに施政方針で「『全世代型社会保障制度』を目指す」と称して、現在原則1割の75歳以上の高齢者の医療費窓口負担に、新たに「2割負担」を導入することの検討など全世代に負担増を迫る姿勢を見せました。家計を直撃し、受診抑制を引き起こすなど、国民に不安を広げるものです。
安倍首相は“高齢者の8割が65歳を超えても働きたいと願っている”と述べましたが、元調査では55%です。働き方の変化に合わせた社会保障改革を進めると強調しますが、低年金など社会保障への不安から多くの高齢者は“働かざるをえない”のが暮らしの実態です。
景気を悪化させた消費税の減税とともに、暮らしの実態をみつめ、人間らしく生きる権利を保障する立場での社会保障改革こそ求められています。
ごまかし 外交・安全保障
大国にペコペコ
安倍首相は、日米安保条約改定60年にふれ、日米同盟が「かつてなく強固なものとなった」と誇りましたが、米国従属政治の矛盾には目を背け、ごまかしました。
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で、これまで施政方針や所信表明でくり返してきた「辺野古移設を進める」との言葉は口にせず、「沖縄の基地負担軽減に結果を出していく」としました。
新基地工事は軟弱地盤の存在により、政府が当初想定よりも工期を大幅に延長。さらに費用も想定から2・7倍に膨張。見通しのない工事に巨額の血税をつぎこむことに国民の厳しい目が向けられていますが、これらの説明はしませんでした。
中東情勢に関し、イラン核合意からの一方的な離脱やイラン司令官の殺害など、現在の緊張状態をつくりだした米国の無法について批判は一切なし。そのうえ、米国とイランの衝突の危険は消えていないなかトランプ米政権の「有志連合」構想に応える自衛隊中東派兵を宣言しました。
ロシアとの領土問題を解決し、平和条約の締結を「成し遂げる」と威勢よく声を張り上げました。
しかし、「2島決着」論を持ち出したものの、プーチン大統領に拒否されて失敗した不都合な状況は隠したままです。中国については、香港やウイグルでの深刻な人権侵害や尖閣諸島問題への言及は避けました。
一方で韓国については、「徴用工」問題を念頭に「国と国との約束」を守るように求めるなど、強硬的な態度を示しました。
安倍首相は「世界を駆け回り、ダイナミックな日本外交を展開してきた」などと述べましたが、何の成果も語れず、米国への追随に加えて、覇権主義的姿勢を強めるロシア・中国に批判もできない屈辱的な姿勢をさらけだしました。
ごりおし 憲法改悪
オリ・パラ悪用
「令和の新しい時代が始まり、オリンピック・パラリンピックを控え、未来への躍動感にあふれた今こそ、実行の時だ」―。
安倍首相は施政方針で、新たにオリ・パラを国威発揚に使って、憲法9条改悪に利用する異常な執念を示しました。
安倍首相は通常国会の召集前から、公正中立であるべき議長までも巻き込んで改憲議論を国会に押しつけようとしています。
安倍首相の改憲発言に呼応して、大島理森衆院議長は、改憲のための国民投票法改定案について「冷静に話し合い、国民の権利をしっかり担保する責任を果たさなければならない」(10日)などと発言。
山東昭子参院議長も改憲について「何も議論されていないことは不満だ」(14日)と踏み込みました。
しかし、安倍政権下での改憲には、日本共産党や立憲民主党、国民民主党などの野党が一致して反対。昨年の参院選でも、性急な改憲を望まない民意が示されています。
安倍首相が主導して旗を振れば振るほど、国民の間には改憲への警戒と反発が広がっていきます。国民の望まない改憲は、キッパリと諦めることこそ必要です。