しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年1月18日(土)

「チバニアン」正式命名

地質時代に初の日本の地名

写真

(写真)国の天然記念物に指定された「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」。崖の上のところの地磁気の向きは現在と同じですが、崖の下部では反対向きです。左上から右上方に筋状に延びているのが白尾火山灰層で、火山灰層のあたりから少し上にかけて地磁気の向きが移り変わる遷移帯があります=2019年5月17日、千葉県市原市

 46億年の地球史を区分する地質時代の一つ、更新世中期(77万4000年前~12万9000年前)が「チバニアン」(千葉の時代)と命名されることが決まりました。日本の地名が地質時代になるのは初めて。国際地質科学連合が17日、韓国・釜山で開いた理事会で、千葉県市原市の養老川沿いの地層「千葉セクション」が地質時代の“国際標準”として認定されたと、申請した国立極地研究所、茨城大学など日本の研究チームが明らかにしました。

 地質学では、岩石の形成年代や生物化石の違いで地球の歴史を117の時代に分けており、それぞれの境界を観察・研究するうえで優れた地層を地球上の1カ所だけ「国際境界模式地」(GSSP)として認定します。GSSPは世界で70カ所以上が認定されていますが、今回、未定だった更新世前期と中期の境界(77万4000年前)のGSSPとして千葉セクションが認定されました。

 この境界は、これまでで最後の地磁気逆転が起きた時期にあたります。地磁気逆転は、地球磁場の向きが南北逆になる現象(方位磁石のN極が指す方向が逆転する)。千葉セクションでは、同時期に起きた古期御嶽山(長野・岐阜)の噴火でできた「白尾(びゃくび)火山灰層」の年代測定により、地磁気逆転の時期を高精度に決定できました。

 日本チームは、2017年に千葉セクションをGSSPとして申請。イタリアの2カ所の地層も候補にあがっていましたが、審査の過程で千葉セクションに絞られていました。また、この地層は18年に国の天然記念物に指定されました。

図

解説

77万年前の海底が隆起“奇跡の地層”

 私たち現生人類(ホモ・サピエンス)は、30万~20万年前にアフリカで誕生したと考えられています。新たに命名が決まった地質時代「チバニアン」(更新世中期、77万4000年前~12万9000年前)は、人類誕生の時代として地球史の教科書に載ることになります。

 今回、チバニアン命名の前提である国際境界模式地(GSSP)に認定された地層「千葉セクション」は“奇跡の地層”ともいうべき貴重な存在です。

 千葉セクションは、77万年前ごろの海底がいま陸上で見えている地層で、そうした場所は世界中を探してもほとんどありません。房総半島がすごい勢いで隆起していることでつくりだされました。

 また泥の堆積(たいせき)速度が1000年で平均2メートルと速いのも特異です。そのため細かい時間スケールの環境変動が記録されています。地震や海底の崖崩れなどで砂が流れ込むと泥が削られて不連続な地層になりますが、ここは泥だけの連続的な地層が厚さ80メートルほど続いています。

 海が沈降しているときに大量に泥がたまって連続的な地層が形成され、その後、この場所が隆起に転じて陸上に。河川の浸食によって削られて岸にできた崖に、この地層が姿を現しました。

 日本チームはGSSPの審査の過程で、千葉セクションや周辺の地層を研究する科学的意義を示す努力を積み重ねてきました。

 有孔虫など海洋微生物の化石や花粉の化石を詳しく調べ、この時期に寒冷→温暖→寒冷と気候・海洋環境が激しく変化したこと、当時の房総半島周辺海域での黒潮流域の南下・北上が数千年周期で起こっていたことなどをつきとめました。

 地球史で最後に起こった「地磁気逆転」の時期を高精度に決めたほか、逆転にともなって急激な地磁気強度の低下現象が起こることを確認しました。

 この時代の地球環境の変遷を明らかにすることで、将来の気候変動を予測するうえで重要な知見が得られると期待されています。

 (中村秀生)


pageup