2020年1月16日(木)
主張
カジノ汚職再逮捕
利権の闇にメス入れ、廃止せよ
カジノ汚職事件で、東京地検特捜部は衆院議員(自民党離党)の秋元司容疑者を再逮捕しました。賄賂の額は、最初の逮捕時の370万円相当から700万円超に膨れました。中国企業の「500ドットコム」との汚い癒着の実態が浮かび上がっています。
犯罪の温床にどっぷり
新たに賄賂と認定されたのは2017年9月、ドットコム社が秋元容疑者の管理していた銀行口座に送金した200万円と、同年12月にドットコム社が招待した中国旅行の旅費など150万円です。この中国旅行で秋元容疑者らは、ドットコム社のプライベートジェットで同社の本社がある深圳に飛び、近隣のマカオでカジノ賭博に興じたといいます。
カジノは、賭博だけでなく、黒い資金の洗浄や贈収賄の舞台となることも多い犯罪の温床です。秋元容疑者の行状は、そうしたカジノ業界の体質にどっぷり漬かったものです。
ドットコム社から自民党4人、日本維新の会1人の計5人の衆院議員に100万円が渡っていた疑惑も深刻です。このうち維新の下地幹郎議員はドットコム社から100万円を受領し、政治資金収支報告書に記載していなかったことを認め、党から除名されました。
自民党の中村裕之前文部科学政務官は北海道留寿都(るすつ)村でカジノ誘致に取り組んでいた観光会社「加森観光」から200万円を受領し、うち100万円を岩屋毅前防衛相に寄付したといい、2人とも「ドットコム社からの資金とは認識していない」としています。船橋利実議員も加森観光からの100万円受領を認め、収支報告書を訂正しました。
今回の再逮捕と同時に、加森観光会長がドットコム社と結んだ贈賄側として起訴されたことで、不明朗さは増しています。
宮崎政久法務政務官は資金受領を否定していますが、贈賄側のドットコム社顧問との会食や過去の裁判で代理人を務めていた事実などが浮かんでいます。
5人はいずれも国会でカジノ解禁の先兵となったカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)の幹部や構成メンバーです。特定の海外カジノ企業との癒着疑惑が浮かんだことの政治的道義的責任は大きなものがあります。国会は証人喚問も含め、事実解明に手を尽くすべきです。
政府はカジノ汚職事件が噴き上がるさなかの7日、カジノ管理委員会を発足させ、カジノ解禁へのスケジュールを粛々と進めようとしています。
菅義偉官房長官は「IR(カジノを中核とする統合型リゾート)は日本が観光大国を目指すうえで必要だ。これ(整備)と今回の事件は明らかに次元が違う」とのべ、事件との切り離しに躍起です。
野党は廃止法案を提出
カジノ推進派の情報発信機関「アジアゲーミングブリーフ」は10日付で「安倍政権のブルドーザー手法の限界」という論評を出しました。推進勢力ですら、矛盾を認めざるを得ないのです。汚職をうやむやにしてカジノを推進するねらいは通用しません。
20日開会する通常国会で、野党はカジノ実施法廃止法案を提出します。疑惑の徹底解明、カジノ廃止へ、国民世論を大きく高めるときです。