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2020年1月15日(水)

主張

性暴力の根絶

当事者の声を全面的に生かせ

 性暴力のない社会への願いを花に託し、毎月11日に各地で取り組まれているフラワーデモが大きく広がっています。今月は過去最高の34都道府県で開催されました。

 性暴力被害を語ることは長くタブーとされ、多くの被害者が誰にも打ち明けられないまま、胸に秘めてきました。しかし、フラワーデモという当事者の声を受けとめる場がつくりだされたことで、「自分の住む地域で声を上げたい」と立ち上がる人が次々に生まれました。人権と尊厳を守る運動の歴史の中でも画期をなす動きです。

大きな勇気与えた勝訴

 昨年12月18日、ジャーナリストの伊藤詩織さんが山口敬之・元TBSワシントン支局長から性的暴行を受けたとして損害賠償を求めた民事訴訟で、東京地裁は伊藤さん勝訴の判決を言い渡しました。

 この判決には、過去に性暴力に対し声を上げてきた人たちのたたかいの成果が刻まれています。

 山口氏側は、伊藤さんが事件の数日後、山口氏に「無事にワシントンに戻られましたか」とのメールを送っていることを、性行為に合意があった根拠として取り上げました。しかし判決は、性暴力の被害者が「その事実をにわかに受け入れられず、それ以前の日常生活と変わらない振る舞いをすることは十分にあり得る」と指摘して山口氏側の主張を退け、伊藤さんの供述の信用性を認めました。性暴力の被害者心理に対する理解に立った、重要な判断です。

 判決は、伊藤さんが記者会見や著書で被害体験を公表したことについて、山口氏側が名誉毀損(きそん)やプライバシーの侵害だと主張したことに対しても、伊藤さんの行動には公共性、公益性があると認定し、山口氏側の訴えを認めませんでした。この判決が、どれほど当事者に勇気を与えたか、はかりしれません。

 判決後の会見で伊藤さんは、「刑法に『同意のない性交は違法』という規定があれば、もっと立件のハードルは低くなると思う。次の刑法改正に盛り込んでほしい」と述べました。当事者団体も昨年12月、被害実態や実態調査データに基づく刑法見直しを求める要望書を法務相に提出しました。これらの声を、今年からの刑法見直し議論に全面的に生かすべきです。

 伊藤さんの被害は、就職の相談のため山口氏と面会した際に受けたもので、深刻な「就活セクハラ」の事案でもあります。男女雇用機会均等法は従業員に対するセクシュアルハラスメントを防止する義務を雇用主に課していますが、求職者は対象外です。ILO(国際労働機関)の「労働の世界における暴力とハラスメント禁止条約」は、各国にハラスメント禁止法の制定と、保護の対象を就職活動中の学生や求職者にも広げることを要請しています。日本がこの水準に踏み出す重要性も、改めて浮き彫りになりました。

北京会議から25年の年に

 「娘たちの世代に同じ思いをさせない」「世代や性別を超えて連帯を」―当事者の声から始まったうねりは、とどまることなく広がり続けています。

 今年は、女性に対する暴力の根絶をジェンダー平等達成の重大課題の一つとして提起した北京会議から25年目の節目です。女性への暴力撤廃へ大きな一歩を記す年にするため、力をあわせましょう。


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