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2020年1月12日(日)

台風19号3カ月

揺れる被災者 現地再建か移転か

宮城・大郷町

 全国で大きな被害を出した2019年の台風19号から12日で3カ月。川の堤防が決壊し大きな被害を受けた宮城県大郷(おおさと)町では、被災者が「現地再建」か「移転」かの判断を迫られ、揺れ動いています。(高橋拓丸)


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(写真)吉田川の決壊箇所(左側)と、川沿いにあり大きな被害を受けた糟川寺を指す千葉町議=9日、宮城県大郷町

 県の中央を流れる吉田川の堤防が決壊し、大郷町(2800世帯)の147軒が全半壊しました。

 甚大な被害が出たのが、中粕川(なかかすかわ)地区です。えぐられたままの地面には水がたまり、激流でもぎ取られたガードレールが沈んでいます。雨戸もガラスも破られ、吹きさらしになった家々もあります。川沿いにある糟川寺(そうせんじ)は、本堂脇の地面が大きく陥没し、墓石約200基や畳、仏具も流出しました。

河川改修 国の方針不透明

 105世帯311人が住むこの地区には、町から集団移転の構想が提起されています。

地図:宮城県大郷町

 行政区長の赤間正さん(69)は、床上50センチの浸水被害を受けました。「堤防をしっかりと強化して安心して住めるようになるなら、移転でなく現地再建したいという人もいます。河川改修について国土交通省の方針が明らかになっていない現在、判断材料が足りず決めかねている住民が大勢います」と語ります。

 集団移転構想についての町の意向調査では、同地区での現地再建を望む声が48・9%。構想そのものには「条件次第」というのが最多で、多くの住民が決断を迷っています。

 赤間区長は「移転以外にも、流されたトラクターへの助成や納屋の解体費用など、次々に判断を迫られており、地域はがれき撤去からまだ何も進んでいないのが実態です」と話します。

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(写真)激流の直撃を受け、住人がいなくなった家々が並ぶ被災地=9日、宮城県大郷町

 昨年11月末に始まったプレハブ仮設住宅への入居は、原則として2年で期限を迎えます。

 町総合運動場に45戸建てられたプレハブ仮設住宅の集会場では、「お茶っこサロン」を開いていました。

 それに参加していた女性(67)は「ビニールハウスもトラクターも、玄関の下駄箱の中身までみんな水に持って行かれた。年金暮らしで貯金もないから、ここを出たらどこにどう暮らすか、決められずにいます」と不安を口にし、「また畑をやりたいけど、それを考えられるようになるのは、まだずっと後になりそう」とつぶやきました。

国の財政支援へ働きかけ

 大郷町は、現地再建も移転もどちらも支援する方針で、国の被災者生活再建支援金に上乗せして、町内に家を新築再建する住人に最大150万円、補修して住み続ける住人へ最大50万円の独自補助を検討しています。

 しかし、現地で再建するにしても移転するにしても、被災者には資金面の不安が重くのしかかっています。

 日本共産党の千葉勇治町議は「町は国に対して河川の改修計画を明らかにさせ、国による用地買収金などを再建の財源に結び付けられるよう働きかけることが必要だ」と指摘。町議会でも、迅速な被災・災害支援対策に国への働きかけを求めています。


 台風19号および前線による各地の大雨被害の状況 総務省消防庁によると、死者は99人(うち災害関連死2人)、行方不明3人。全・半壊、一部破損、床上・床下浸水の住宅被害は9万4139棟にのぼります(10日現在)。内閣府によると、10日現在、避難所生活を余儀なくされている人は福島県の116人。


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