2020年1月7日(火)
きょうの潮流
健康を保つために欠かせないビタミン。不足すると体の機能がうまく働かなくなり、病気やときに死の危険を招くことも。それは教訓となって歴史や風習に表れています▼大航海時代、イギリス海軍はビタミンCの欠乏による壊血病に苦しみました。航海中の食事は保存のきく材料だけで新鮮な果物や野菜が足りない。そこでライムを摂取するようになり、その後、英国の水兵は「ライミー」とやゆされることに▼きょうは無病息災をねがって春の七草がゆを食する日。冬に不足しがちなビタミンを補い、正月の食べすぎ飲みすぎで疲れた胃を休める効用があるとか。これも江戸時代から伝わる「人日(じんじつ)の節句」です▼「健康は第一の富である」(エマーソン)といわれるように、だれもが健やかに過ごしたいと思うもの。日本の平均寿命は女性が87歳、男性が81歳ですが、厚労省による日常生活に制限のない健康寿命は女性が75歳、男性が72歳で開きがあります▼安倍政権は健康寿命を延ばすことを掲げますが、深刻な問題になっているのが医療格差です。生活苦で医者にもかかれない、高額な治療費や薬代を払えない、近くに病院がない。さらに政府による負担増や増税が追い打ちをかけています▼人生100年時代を強調しながら、ひずみをただすどころか、貧富の差をひろげる社会。5年後には高齢者の人口は総人口の3割に達すると。何ものにも代えがたい健康を市場原理にさらし、命に格差をつける。古来の習わしからもかけ離れた姿です。