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2019年12月31日(火)

知りたい聞きたい

福島第1 トリチウム汚染水処分は?

海洋放出に批判 検討続く

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(写真)福島第1原発の敷地内にひしめく汚染水タンク=2018年2月(本紙チャーター機から三浦誠撮影)

  東京電力・福島第1原発事故で発生している大量のトリチウム汚染水の処分について、海洋放出などの案が話題になっていますが、どんな検討がされているのですか。(千葉県・女性)

  福島第1原発では、高濃度のセシウムやストロンチウムなどを含む放射能汚染水が日々発生しています。

 東電は、62種類の放射性物質を国の放出基準(告示濃度限度)未満に低減できるとうたう「多核種除去設備」(アルプス)で汚染水を処理し、タンクにためています。しかし水素と化学的性質がほぼ同じであるトリチウム(3重水素)は除去できないため、処理後の水も高濃度のトリチウムを含んでいます。

 すでに敷地内の991基のタンクに約118万立方メートル(処理が未完了のものを含む)の汚染水がたまっており(12月12日時点)、現在のタンク計画では2022年夏ごろに満杯になると東電は説明しています。

 トリチウム汚染水について国の作業部会では、▽放出基準以下まで薄めて海に放出▽地層注入▽水蒸気として大気に放出▽水素として大気に放出▽地下埋設―という五つの処分方法の技術的評価をしました。16年からは社会学や水産学など幅広い分野の専門家による別の小委員会で、風評被害などの社会的影響を含めた慎重な検討を進めてきました。

小委員会で議論

 そうしたなか、アルプスで処理後の汚染水の約8割に、トリチウム以外の放射性物質が放出基準を超えて残存していることが18年に発覚。説明してこなかった東電への不信感と怒りが高まりました。

 小委員会では、漁業関係者や市民からの提起を受け、タンクに保管し続けることも検討課題に追加。技術者も参加する民間シンクタンク「原子力市民委員会」からも、大型タンクによる長期保管、砂・セメントと混ぜてモルタル固化する方法が実現可能だとする見解が出されました。

 しかし国・東電は大型タンクやモルタル固化案について後ろ向きな態度に終始。十分な議論が尽くされないまま、12月23日の小委員会には、事実上、海洋放出と水蒸気放出の2案に絞る取りまとめ案が提示されました。

 委員からは「海洋放出は社会的影響がきわめて大きいと書くべきだ」「(5案のうち)三つが『×』で、残った二つは『△』なのか。風評被害という視点からみたとき、この二つは大きな『×』がつくと思う」など、疑問の声が相次ぎました。環境団体や漁業関係者からも批判や反発の声が上がっています。

 今回の取りまとめ案は白紙に戻し、今後も小委員会で検討を継続するとしています。

なし崩しでなく

 トリチウム汚染水の処分方法の最終結論は、小委員会の検討結果を踏まえて国が決定するという流れです。

 原発汚染水をめぐっては、これまでの国・東電の後手後手の対応やデータ隠しに不信感が広がっています。

 アルプスによる処理が不完全な汚染水は再度処理するとしていますが、詳細な検討が進んでいるとはいえません。基準値以下まで薄めたトリチウム水の安全性についても、国民の不安が払しょくされていると言い切れる状況ではありません。

 このまま「タンクが満杯になるから」と、なし崩し的に処分方法を決めれば、本格操業再開にむけ努力している漁業関係者など地元の思いを踏みにじる結果になりかねません。

 国・東電は事故を起こした加害者の立場を自覚し、国民の声を聴き慎重に対応することが求められています。

 (2019・12・31)


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