2019年12月18日(水)
国免責の不当判決
賠償 5原告のみ44万円
山形地裁 原発避難 被害を無視
東京電力福島第1原発事故で福島県から山形県に避難した住民ら201世帯734人が平穏に生活する権利を侵害されたなどとして国と東電に対し計約80億7400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、山形地裁(貝原信之裁判長)で出されました。
貝原裁判長は、国の責任について、東電に対して津波対策を講じるように「規制権限を行使しなかったことが合理性を欠くとはいえない」として、国の賠償責任を否定しました。また、東電に対し原告5人に計44万円(1人当たり8万8000円)のみの賠償を命じました。弁護団は「不当な判決で納得できない。仙台高裁に早期に控訴したい」と表明しました。
全国で約30ある同様の集団訴訟で13件目の一審判決。国が被告になった10件の裁判で、国の責任を否定したのは4件目です。
貝原裁判長は、国の機関が地震予測「長期評価」を公表した2002年ごろの時点で、福島第1原発の敷地を超える高さの津波の到来を予見できたと認めながら、「(予見性の)程度には限界もあった」と判断。津波対策を取っても「事故の発生を防止できなかった可能性も相応に残る」として、国の規制権限の不行使は違法といえないと結論づけました。
原告の9割以上が避難指示区域外の避難者。賠償で5人以外の原告について「東電がすでに弁済した額を超えない」「(支払われるべき慰謝料は)東電が公表している賠償基準額を超えることはない」などとして上積みを認めませんでした。
人の苦しみ それで済むのか
弁護団が会見
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判決後の原告側弁護団の記者会見で、外塚功・弁護団事務局長は「津波を予見できたとしながら、最終的に国の責任を免罪する。原発事故の理解と向き合い方が弱い」と判決を批判。「慰謝料でも東電からすでに払われた金額、4万円とか8万円でいいんだという。6年間も避難している人の苦しみがそれで済むのか」と怒りを込め、高裁でたたかう決意を述べました。
福島県郡山市から避難してきた原告の30代の女性は「これからの子どもたちのために声を上げようと原告になった。国の責任が認められなかったのが残念」と話しました。
判決に駆けつけた福島原発かながわ訴訟原告団の村田弘団長は「国と東電が言っていることを代弁、追認した最低の判決。司法の役割を果たしていない」と批判しました。