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2019年12月18日(水)

きょうの潮流

 その講演は、クリスマスの贈りものでした。「この宇宙を支配する法則のうち、ろうそくが見せてくれる現象にかかわりをもたないものは一つもない」▼18世紀末、ロンドンの貧しい家庭に生まれたマイケル・ファラデーは、のちに最も影響をおよぼした科学者の1人になりました。暗闇に灯をともす一本のろうそくを用いることで科学と自然、人間との深い関係をひもとく。少年少女に向けた晩年の話は『ロウソクの科学』にまとめられ、時代をこえて読み継がれています▼小学生のとき先生から勧められたこの名著が目覚めになったのが、ノーベル化学賞を受けた吉野彰さんでした。なぜろうそくは燃えるのか。それは好奇心となって少年の胸に化学の炎を宿しました▼日用品から宇宙まで。小型で軽量、くり返し使えるリチウムイオン電池は私たちの生活に大きな変化をもたらしました。それは脱炭素化や持続可能な社会の実現に道を開くことにも▼開発した吉野さんの業績は連綿と続いてきた研究に支えられています。しかしいま、日本の若い研究者が置かれている環境は劣悪です。予算が削られ自由に研究できない、安定した雇用もない…。このままではノーベル賞受賞者も出なくなってしまうと、関係者は憂えます▼ファラデーは講演の最後に希望をこめて訴えました。ろうそくのように周りの人びとの光となってほしい。人類にたいする義務を果たすためにも、と。科学を志す芽を育て、花を咲かせる土台を整える責務は国にあります。


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