2019年12月16日(月)
主張
国連総会の決議
核兵器廃絶への流れ 勢い示す
国連総会は12日、軍縮問題に関する決議の採決を行い、核兵器禁止条約の批准を加盟国に求める決議が123カ国の賛成で採択されました(反対41、棄権16)。昨年に続き加盟国の約3分の2の圧倒的多数の意思が示されました。
追い詰められる保有国
2017年7月に採択された核兵器禁止条約は、核大国による妨害や圧力にもかかわらず、批准が34カ国となり、発効に必要な50カ国まであと16カ国に迫っています。署名国も80カ国にまで達しました。国連総会では、アジア、アフリカ、中南米をはじめ多くの国が、禁止条約を支持し、「禁止条約が軍縮議論を活性化した」(ガーナ)などと評価する発言をしました。条約が核兵器廃絶の流れに勢いを与えていることは明瞭です。
核保有国とその核戦力に依存する同盟国は、核兵器を違法化する禁止条約にかたくなに反対しています。昨年の総会で、米ロ英仏中の核五大国は討論の中で共同声明を発表し禁止条約を非難しました。しかし今年は様子が違いました。五大国が共同で反対を表明したのは、全体討論が終わり決議案を採決する最後の段になってでした。禁止条約の是非を議論すれば、「核兵器は安全にとって必要」と繰り返す核大国が孤立するのははっきりしていました。核兵器廃絶への「逆流勢力」が追い詰められているというのが、大局的な構図です。
総会では中距離核戦力(INF)全廃条約の失効などをめぐり米ロ、米中が非難しあう場面もあり、多くの国が新たな核軍拡競争への懸念を表明しました。核使用をちらつかせ、核戦力の近代化を競い合う核大国の動きは許し難いものがあります。重要なのは、核大国が共通して依存する「核抑止力」論を放棄させ、核兵器の禁止と全面廃絶へと足を踏みださせることです。来年は核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれます。総会でも、保有国も合意してきた核兵器廃絶の約束やNPTの核軍縮交渉の義務(第6条)を強く迫る発言が相次ぎました。核五大国の責任が鋭く問われます。
核軍縮の交渉の「主役」が、一握りの核大国から、大多数の国々と市民社会へと交代しつつあります。とりわけ反核運動と世論が、重要なカギを握っています。総会でも「市民社会との関係を高く評価し、共同を続ける」(カリブ共同体)などの声がありました。被爆75年でもある来年は、NPT再検討会議にあわせてニューヨークで原水爆禁止世界大会を開くことが計画されています。1000万人を超えて広がる「ヒバクシャ国際署名」もゴールの年です。反核平和運動の飛躍が求められています。
批准する政府の実現を
被爆国・日本政府の姿勢も重大です。広島と長崎を先月訪れたローマ教皇が核兵器廃絶への強いメッセージを発したことは、国際的にも大きく注目されました。ところが安倍晋三政権は、アメリカの「核の傘」を理由に、禁止条約を拒否し続けています。国連総会では、核保有国の意向に沿い、禁止条約批准を求める決議に反対した上、核兵器廃絶の主張を弱める決議案を提出し、非核保有国から批判されました。核兵器廃絶を妨害する政府を、一刻も早く禁止条約に署名・批准する政府に変えなければなりません。それは日本の運動の国際的な責務でもあります。