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2019年11月9日(土)

主張

米軍機の規律違反

危険な飛行横行の根本ただせ

 昨年12月に高知県沖で墜落事故を起こした米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)所属の戦闘攻撃機部隊で、手放しの操縦や飛行中の読書、酸素マスクを外しての自撮りなど、重大事故につながりかねない規律違反が横行していたことが明らかになり、衝撃が広がっています。日本の主権や国民の命と安全に関わる大問題です。政府は米軍に強く抗議し、実態の究明とその根絶を求めるべきです。

両手を放し読書や自撮り

 規律に反した危険な飛行が常態化していたことは、戦闘攻撃機部隊の上級機関である第1海兵航空団(司令部・沖縄)の指示に基づく調査報告書(今年9月公表)に詳述されていました。

 報告書は、昨年12月6日、高知県沖で、岩国基地に常駐する第242全天候戦闘攻撃中隊のFA18戦闘攻撃機(複座型)が、別部隊のKC130空中給油機と訓練中に接触し、両機ともに墜落して6人が死亡した事故を調査し、結果をまとめたものです。

 それによると、事故を起こしたFA18のパイロットは夜間空中給油訓練を資格がないのに実施し、直後に状況認識能力を失ってKC130に激突したとされます。FA18のもう一人の乗員の尿からは睡眠導入剤の成分が検出され、飛行任務に適していなかった可能性にも触れました。

 さらに、事故の「重大な要因」の一つとして、部隊内に「薬物乱用、アルコールの過剰摂取、不倫、規則違反」などの「職業倫理に反した実例」が存在し、それが「安全性に対する無頓着な態度を生み出した」と指摘しました。

 その表れとして、当時、事故機と編隊を組んでいたもう1機のFA18のパイロット(編隊長)が飛行中に操縦桿(かん)から両手を放してスマートフォンを持ち、酸素マスクを外した姿を自撮りし、通信アプリのプロフィルに掲載していたことや、同じ部隊の複数のパイロットが酸素マスクを外し、読書やくしで口ひげを整えたりする姿を自撮りして共有していたことなども明らかにしています。

 薬物などの影響を受け、訓練の資格もなく、飛行の安全に関心のないパイロットが米軍機を操縦し、日本の空を飛び回る―。こんな危険極まる異常事態を放置することは許されません。報告書を受け取りながら抗議さえしなかった防衛省の責任も厳しく問われます。

 加えて報告書で重大なのは、2016年4月28日にも、同じ部隊のFA18が沖縄県沖でKC130と接触し、給油ホースを切断する事故を起こしていたのに公表していなかったことが判明したことです。この事故は、防衛省にも伝えられていませんでした。

 沖縄県沖の事故では2機は墜落を免れ、損害額も低く見積もられたため調査は見送られました。しかし、先の報告書は、沖縄県沖と高知県沖の事故は状況が酷似しており、「16年の事故の調査をしていれば、昨年のような類似の事故を防ぐ是正措置が適切に取られていただろう」と述べています。

地位協定の抜本的改定を

 日本の空で危険な飛行が繰り返されるのも、国内で発生した事故を日本側が把握さえできないのも、米軍に治外法権的な特権を与えている日米地位協定があるためです。その抜本的な改定はいよいよ急務になっています。


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