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2019年11月5日(火)

きょうの潮流

 入社式で社長の祝辞を正す。パワハラやセクハラを黙って見過ごさない。自分の夢や理想を誰はばかることなく堂々と語る…。放送中のテレビドラマ「同期のサクラ」の主人公です▼大手ゼネコンに入った女性社員。上司からの命にも納得がいくまで説明を求める。周りの空気など読まずに信念を貫く。はじめは“痛いやつ”と引いていた同期の仲間たちも、やがて彼女の背を追って自身を見つめ直していきます▼このところ、職場ではっきりと物申す女性社員を中心にすえたドラマが目につきます。NHKの「これは経費で落ちません」は、仕事に誇りをもつ経理社員が誰にでも物おじせずに不正を問いただす。同じく小説をドラマ化した「わたし、定時で帰ります」も、残業しないが主人公のモットーでした▼ドラマなので過剰な演出や面白おかしく描く面も。しかし、こうした主題がある種のあこがれや痛快さを伴って女性や若い世代に受け入れられているのはなぜか▼組織のなかで一つの駒として扱われ、こき使われる。理不尽な要求やふるまいに声を上げられず、やりがいのない仕事にも自分を押し殺す。そんな弱い立場にもんもんとする日常を、働く環境がつくっているからではないのか▼私たちにとっての北極星―。「同期の~」で影響をうけた仲間が主人公をそうたとえる場面があります。導きであり、めざす場所。その姿は、ひとりの人間として尊重されない働き方のなかで悩み苦しむ若者たちにエールを送っているかのようです。


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